第11章 破滅の鐘
口からは光が訪れる事を喜んでいたものの、心の中では軽蔑という矛盾が生まれていた
「ジェイク?」
ヒルトの不安気な声に、我に帰ったようにジェイクの瞳は光を宿し、今まで通りの表情へ変わる
「あ、悪い。
今のは気にしないでくれ」
「・・・」
虚ろな声にヒルトとユリエフは目を合わしながら何も応えることができなかった
「さぁ、諸君!
我等の盟友、インドリームを代表として風を司る者
ヒルト・クローズから貴重な意見を聞こうではないか!」
「え?」
「暗黒戦争という混沌が終結し、早くも10年が経つ
だが、まだ世界は平和とは言えず寧ろ混沌の闇が迫りつつある!
人がどれほど祈りを捧げようと成就し得ない世界平和・・
インドリームであるヒルト・クローズ君はどう考える?」
フランシスの唐突な話題にヒルトは困惑しかなかった
事前に聞かされていたのは、民衆の前でこれからの事を演説するということだけであり、そこにヒルトがインドリームの代表として立つなど予定外だったのだ
「フランシスさん、俺にそんなっ・・!」
「畏る必要はない。
君の言葉を聞けば彼等はより一層強められるだろう
インドリームとして、この世界に光をもたらすにはどうすればよいか・・そして君はどうしたいのか。
それを皆に伝えてくれればいい」
「そ、そんな簡単に言うけど俺はーーー」
「先の話でもいいじゃないですか、ヒルト君」
「先の話?」
「私に教えてくれたヒルト君の夢です
ヒルト君は全ての魔族や闇堕ちが悪とは考えてはいない事
そして皆が夢を持って生きる世界の事を話してあげてください
私はとても素敵だと感じましたから」
満面の笑みでヒルトの背中に手を添え、ユリエフはヒルトを前に進ませる
「・・・」
「ヒルト、頑張れよ!」
「リーダーらしくしなさいよ」
「みんな応援してるよ!」
ライセイ、アラン、イリヤが後押しするように声をかける
その声は民衆の歓声のせいで、目の前にいるヒルトでなければ聞こえないほど小さく、消えそうなものだった
それでもヒルトにしてみれば十分であり、ありのままを語ろうと思い固めれる礎となった
「ありがとう、みんな」
不安という感情は一切なく、ヒルトはしっかりと足に力を入れ
フランシスよりも前に出て改めてポーラル長の住民全員に姿を見えるように立った
「すぅー・・・はぁ」