第11章 破滅の鐘
ラルザの助力によってポーラル町へ戻ることができたヒルト、ユリエフ、ジェイクは風に包まれ走り去っていく
「・・・」
腑におちない表情で曇らせるジェイクに、ユリエフは真っ先に気づく
「何か気になることでもありますか?」
不安気な表情で語りかけるのではなく、相手の気持ちを包み込むような聖母の優しさが満ちていたその顔に、ジェイクは深呼吸をして冷静に話すことができた
「あのラルザとかいう女・・クライヴに使える闇の騎士なんだよな?」
「えぇ、それがどうかされましたか?」
「闇の騎士になる前はどんな存在だったのか知っているか?」
ラルザの過去、その正体に疑問をもつジェイクに対してユリエフ、ヒルトは深く考えたことがなかった
興味がないわけではないが、時間があればクライヴに聞いておこと思うほどのことだった
それをなぜ、今のタイミングでジェイクが不安な表情で疑問としてあげているのか二人には理解できなかった
「ラルザさんの過去は詳しく知りません
ただ、腰にかけていたナイフと気配を隠すことに長けていたことから、生前は暗殺職に就かれていか可能性があるでしょうね」
「ユリエフは俺たちより昔から生きて地上を見張っていた天族だろう?
それでもラルザのことは知らないのか?」
「すみません、ジェイク君
私は確かに遙か昔から生を受けて天界へいましたが、地上の全種族のことを管理をしていたわけではありません
それに、天族にもそれぞれ役割があり、私は地上の種族を監視する立場ではなかったのです」
ユリエフの言葉に黙り込むジェイク
その心の中では納得できないことから、別の可能性を考えていた
あのクライヴが闇の騎士として配下に置く存在である以上、その辺の暗殺者ではない
そうなれば、とある種族の英雄級の実力を持つであろうが、そんな目立つ者を管理が違うという理由だけで知らないとはいかない
ここで考えられるのは三つ
一つは、ユリエフがラルザの生前の正体を知らないと偽りを述べている
二つ、本当にラルザがただの暗殺者であり、ユリエフのような聖人には目がつけられない存在だった
三つ、ユリエフはラルザの事を知っていたが、何かしらの理由で記憶から消えている
「くそ・・どれが真実でも答えにはならない
あの女は・・・危険だ」
「え?」
「あ、いや悪いユリエフ
俺の独り言だから気にしないでくれ」
