第11章 破滅の鐘
「外に出てからどうやって俺たちを見つけるんだよヒルト
結界は目視できないうえにーーーー」
「出る必要はないわ」
「?!」
突然空間内で響く声にヒルトとユリエフは耳を疑う
その声はかつて監獄で最後に聞いた女性のものであり、クライヴに魂を捧げた存在
「直接話すのは久しぶりね、ヒルト・クローズ
クライヴ様の中ではいつも見ていたけど。」
真紅の長髪をなびかせ、口元は薄暗いベールで隠し
局部と腕、両足にだけ漆黒の鎧をまとった女性はヒルトの目の前に姿を現した
「ラルザさん?!
どうしてここに・・いや、どうやってここが?!」
「結界から脱出されたクライヴ様からの命令よ
貴方達を救うように、とね。」
腰に装着していた短剣を右手で握り掴み、闇の炎を放出させていく
「黒き炎よ・・我に道を知らせ」
炎は結界の壁に喰らい付きながら紙切れを切り裂くように
容易く結界を破壊していく
「結界がこんなにも簡単に破壊できるなんて・・すごいです」
「この結界は火族特有のものよ、聖女ユリエフ。
そして私が派遣された理由から、クライヴ様は今回の敵の正体を把握されているの」
焼け落ちていく壁は塵となって消え失せ、現実世界へ戻っていく中
ヒルトは1つだけ確認を取っておきたいことがあった
「ラルザさん、クライヴは無事なのか?」
ヒルトの問いに、ラルザは満足な笑みを浮かべ
すぐに頷き答える
「彼の方は既に結界を抜け出され、次なる手を打つために動かれているわよ
敵の思い通りにはさせないためにね」
「無事でよかった
それで、敵っていうのは破滅の鐘のことか?」
「それは実際にクライヴに会い、その目で、その耳でしればいいことよ。」
結界が完全に解け、塔の中階層である元の場所にたどり着き
静寂が包まれる
「さぁ、行きなさい
ガウンという男は最後の任務の為にポーラル町のフランシスを殺す為、向かっているところよ」
「!」
「フランシスの命と誇り、夢を無駄にしたくないなら
早く行きなさい」
「っ、ユリエフ、ジェイク、俺の風で飛んで戻ろう!」
「わかりました」
「あぁ!」
ヒルトは風を両手に集め、3人を包み空中に体を浮かばせる
「ラルザさん、ありがとう」
「礼には及ばないことよ
おそらく、また貴方と2人で話が出来ると思うしね」
「え?」
「こっちの話よ
さぁ、早く行きなさい」
