第10章 生命の源
かつて闇族は強力な力を得るため、魂と肉体に闇の呪いを受け付ける珠玉を造り上げた
命を堕とした魂は種族関係なく、天族の元へ集められ、次の転生へ導かれる
だが、闇族の誇りに掛けて死後、天族に魂を扱われることを嫌い
転生されない仕組みを創った
それが珠玉――――
フィオレの体に埋め込まれた物だった
「この珠玉は、いかなる光をうけつけない・・・
インドリームの力も・・同じだ・・
私は・・もう二度と合うことはないだろう」
「フィオレさん」
「なに、そんな顔しないの・・・
アランちゃんが命令すれば、インドリームの力が全て終わらせてくれるわよ・・・うぐっ!」
フィオレの肉体と意識は限界に近づいていた
赤い瞳から血を流し、言葉ではなく、口からは唸り声をあげていく
「あたしが・・しなくちゃいけない
だったら、全ての生命を構築する清らかな水よ、我は求める。
汝をもって、この世の闇全てを払い流す力を、この手に!」
アラン両手に降り注ぐ雨の水が球体となり、膨張し、自身に膨大な水を巻き上げた
その光景は、まるで水がアランを主と認め、目の前にいる魔族・・フィオレを清く洗い流そうとしているようだった
「ありがとう、フィオレさん」
その言葉はフィオレの耳に届いただろうか
アランを取り巻いていた水が一気にフィオレを飲み込み
肉体の全てをインドリームの力で崩していく
魔力が水流にのって流れていき、魔力を失った肉体は灰へなり、脆く消えていく
全てが消え去ったことを合図にするように、水の竜巻は爆発を起こし、瞬時に消えた
洞窟にあった湖の水を全て使い果たしての攻撃
消耗したのはアランの体力や魔力だけではない
重く崩れるアランは、荒ぶる空を見上げながら、泣き喚いた
その声を隠すように、雨はきつく、守るように水の壁が作られていく
フィオレが敗れたことにより、島を造り上げていた力は消え
地震が起き、瓦礫が落ちていく
「みっとも・・・ないわよ・・・」
「?!」
崩れる洞窟の中、フィオレの声が静かに鮮明に届いた
下半身は灰になり、上半身のみがのこったフィオレは仰向けになったまま
アランを見つめていた
「フィオレ・・さん?!」
かけよるアランはフィオレを抱き寄せ、震える手に力をいれた
堕ちる瓦礫からアランを守るように
水は自立して自在に姿を変え、壁になる