第10章 生命の源
「・・・」
「動けば、今度は容赦しないわ。
水の中では、貴方は逃げられない」
「っ・・考えた・・わね・・」
酸素を徐々に奪われながら息苦しそうにするフィオレ
だが、どこか抵抗せず、満たされた表情をしていた
「つよいわね、アランちゃん・・・あの魔女が言っていたとうりよ」
「魔女?
まさか、ルキュリアとかいう魔女のこと?!」
「ええ、その魔女は私にたくさんの真実を教えてくれたわ。
ついでに、あなたの活躍もね・・」
「な―――」
「それに、もう私には時間がないようね」
「時間?
どういうこと?」
アランが水へ近づこうと足を踏み入れた瞬間
フィオレは黒い血を口から吐き出し、全身の骨が異様の音をたてていく
「!?」
水中でもがき苦しむフィオレに、アランは起きていることがフィオレの意志ではなく、闇の力の暴走だと気付き、水の結界を解こうとする
「だめよ、アランちゃん!」
「っ・・!」
「この結界を・・・解けば・・・この島を沈めてしまう・・・!
私に・・そんなことさせないで!」
「でもフィオレさん、あなたは今――」
「わかってるわよ・・・力を使いすぎた・・ようね・・
このまま結界をとかれると・・あたしは自分の手で理想郷を壊してしまう・・」
「・・・・」
拳を握りながら、アランはうつむく
「こんな迷惑をかけたどうしようもない女の願いはね・・・アランちゃん・・・せめて、貴方に葬られたいわ」
「ふざけないでっ!!」
アランの怒鳴り声が洞窟内に響き渡り、呼応するように荒れていた空から雨が降りだす
「こんな形なんて、止めたことにはならない
アタシは、フィオレさんを助けたいのに・・!」
アランの涙は雨に流されていきながら、声もかき消されていく
「気付いて・・いるようね
私が・・・ただの魔族じゃないから、インドリームの力で魂を浄化できないって・・・」
フィオレは胸から禍々しい赤い光を放つ宝石を見せる
「この石の力で・・・私は強力になれていた・・
それも魔女ルキュリアとの取引で手に入れたもの・・・
二度と助からない運命の代わりに、一時の夢を見る時間を与えてくれた宝石・・」
「フィオレさん、その石が何なのか知ってて、手にしたのね」
「えぇ、この闇の珠玉は魂を闇で染め上げる禁忌
かつて闇族が作り上げた品物。」