第10章 生命の源
稲妻は歓迎するかのように
手を踊り舞いながら轟音を立てている
赤く光る瞳は世界の全てを憎んでいた
漆黒の羽と鱗に包まれた化け物
口からは黒く染まった炎を溜め込み
両手の爪は尖り、鎌のような形状をする
ドラゴンのような上半身と下半身は闇の球体に包まれたその姿は
全種族のどの歴史の文献にも載っていない異形の姿だった
「オオオオッ!!」
化け物が悲鳴に近い声を上げた時
負のエネルギーが凝縮され、化け物を中心に周囲の世界そのものを吹き飛ばした
遠い地で出現した化け物は、土族の領域からみれば
また小さく見えた
それでも森や城壁、軍隊を全て消しとばした光景は近く感じるほど
衝撃波が届いたのだ
アステル紀387年
突如現れた化け物が闇族が作り出したものだと理解した天族は
暗黒戦争に参戦
風、土、水の連合軍に加え、天族が圧倒的に武力と数の軍隊を地上に送り込んだことで戦況は一転
同時に空で風族と激戦を繰り広げていた龍族は姿を消し、部が悪くなった火族も撤退し、戦線離脱
空を守る風族の遊撃部隊とそれを守る土族の護衛部隊
そして闇族の打倒を掲げる天族の主力部隊が一気に
闇族の領地へ踏み入れ、各拠点を制圧した
多くの魔族が倒され、さらに進軍する連合軍
進めば進むほど、闇の瘴気は強くなり
瘴気に触れすぎた者は魔族化し、かつての仲間を襲う
それは地上に住む者だけでなく、天族でさえ触れれば危険な闇の瘴気であり、触れすぎると堕天してしまうことから
主力部隊を更に分散させ、斥候部隊を先頭にし、進軍することにした
アステル紀388年
未だに戦争は終えることが出来ず、闇族と連合軍の攻防が続く中
斥候として前線に立っていた天族の部隊が全滅したと報告が入る
闇に触れ、堕天使と成り果てたか、命そのものを落としたか
混乱する戦場では掴めない
実際斥候の1人も姿を見せることなく、次の斥候や別部隊の編成も行われる
「フィオレさんや仲間たちはね、この斥候隊に魔族にさせられたんだよ」
「?!」
メリッサは過去の映像を見つめながら冷静に語る
激戦の状況を映し出す水の中
見慣れた女性が両手にナイフを握りしめながら
森を走っていた
慣れない人の姿でボロボロの服を着ながら
襲いかかる魔族を倒し、仲間達と声をかけあう
「フィオレさん、この森からはもう逃げましょう!
危険です!」