第10章 生命の源
「――――これが全てよ」
波にゆられながら海賊船の上で静かに語り終え、葉巻を加えて一服するフィオレ
アランとの過去を聞き、静まりかえるインドリーム達
ユリエフは水族の元へ行ったヒルトとアランを心配し
海を見つめる
「フィオレさん達が水族の領域に戻れなかったのは
暗黒戦争で人の命を奪ったから・・ですか」
「そうよ。
正当防衛だったとしても、一人の命を奪うことを許さない
それが水族―――――。
そんなことをしてるから・・・・暗黒戦争で無残な敗戦をするのよ」
憎しみをいだいたその瞳は黒く
空を見つめるが映るのは水族が重んじる命への軽蔑
「技術もあれば、魔法を使用することもできる
その気になれば敵の姿へ変え、戦場を混乱させて海へ引きずり下ろし、その臓物をひきずりおろして・・・―――――」
「フィオレさん」
「・・・・ああ・・申し訳ないね
天族のインドリームには過激な発言だったようだね
こういう人種もいるとだけ思っていてくれればいいよ
暗黒戦争は、一人一人の心を大きく傷つけた
そして天族の介入も遅すぎたからだ・・
あたしは何度も天族へ祈りを捧げ、救いを求めたのに
彼等の姿を現したのは、あたし達が汚れてからだったってね。」
「・・・はい。」
ユリエフはフィオレが抱く憎しみが向けられるのは妥当だと感じた
天族は命を重んじる水族をとても重宝していた
戦争が始まる前から、水族が人に襲われかけそうになった時必ず救いに来ていたからだ
だが、暗黒戦争の時はすぐに参加せず、地上の種族の半分が闇に堕ちてから姿を現した
そして、魔族になった者は水族であろうと何者であろとう殺した
救いを求めても天族は応えず
生きるために魔族を殺しただけで水族に捨てられ
海に潜ることもできない肉体へ変化し
憎しみと絶望は膨れ上がるだけだった
そんな状況で目前に天族がいるとなれば
矛先が向くのも必然
そして天族であることを隠さず、インドリームと過ごしているのも
天族の一員として、過去にしてきたことを受け止める覚悟の表れでもある
「少し、言いすぎてしまったようだね
悪かったわ」
「いいえ。
全て事実ですから、私でよければ何でも言ってください」
「―――あんたは、優しいのね
まるで、命を奪えないアランちゃんと似てるわ
だからこそ、私達は動く必要がある」
「え?」