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IN DREAM2

第10章 生命の源




「あたしはメリッサを暗黒戦争で失くし、絶望して島を沈め、インドリームの力を無理に使い、魔力を消耗しすぎてしばらくは生きてる感覚がなかったのよ。
フィオレさんたちが土族の領域に流れ着き、あたしを匿って過ごしてくれた時、感じたの・・
〝また失くしてしまうんじゃないか”ってね。」

「ならば、お主の言う通り。
フィオレの苦しみや気持ちはわからぬじゃろう
インドリームとして生きるためではなく、我が身の可愛さのために逃げ出したというのなら。」

「そんなっ・・!
アランは逃げ出してなんか」
「ヒルト、あたしは自分のために逃げ出したのよ。」
「え?」

「暗黒戦争後、あたしは一人で逃げ出したのよ
全てを放り出し、人目がつかない場所で息を殺してすごしてたわ」
「けどそれだけで逃げたなんて言えないだろう!」
「言えるわ
それじゃあ聞くけど、そうしたことで他の誰が得をしたっていうの?」
「それは――――」


アランの問いに言葉を濁らせるヒルト
正確な答えがだせない状態で感情に任せて発言することは
今の空気を悪くするだけだと知っている
だからこそ、言葉を発することなく黙りながら心の中で否定することしかできなかった

「・・・過去、自分のために逃げ出したことが原因でフィオレさんの境遇がわからないなんて言いきれない
それに、逃げることが悪いなんてこともないだろう」
「―――」
「俺だって、暗黒戦争のとき、逃げてばっかりだった。
今みたいにインドリームの能力を使えてたわけでもないし、生きる事に必死だったから・・」

ヒルトは思い出した
かつて、暗黒戦争で幼い手を握り、母親に連れられて戦火から逃げ回る光景を。
あの時、逃げていただけで母親の事を何も知らないとは言い切れない
少しの間でも過ごした事で知れるその人の温もり
時が経ち、今にいたるまでの状況がつかめず、人格が変わってしまい、その人の本性等を見抜けなかったとはいえ
全て過去の過ちにつながるとは断言できなかった

「この宝石をフィオレさんに渡して、これからの事をアランが見定めればいいと思う
過去、フィオレさん達の元から逃げ出したことと今回の件はまた別の話だしな。」
「フッ」

ヒルトの話に、沈んでいたアランの表情は少し和んだように見せ
宝石のネックレスを握り、族長へ頭を下げ、フィオレの元へ戻ることを告げた

「よかろう。」


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