第10章 生命の源
「ーーーーあたしがインドリームの力を目覚めたのは
暗黒戦争の時、友達が魔族に喰われた時。
けど、力は使えなくても不思議な魔力が自分の中に眠っている事には物心がついた時から気づいてたの」
暗い深海を泳ぎ、奥深く進んで行く中
アランはヒルトへ己の過去を話していた
人魚の姿になったアランとヒルトは水中でも会話ができ
無音の水中ではアランの声が静かに話そうと、鮮明に聞こえてきた
「さっき話した通りだけど
あたしが知ってるフィオレさんや、他の仲間達は水族でありながら暗黒戦争が終結するまで地上に残った人達。
水族が深海へ撤退して他の種族と交友をしないのは知っていたけど
まさか同族を見捨てるなんてね
ずっと地上にいると鱗は乾き、水族として生きる事ができなくなることを知ってて
それでもあの人達を入れなかったのは、それ相応の理由があると思うけど、今のあたしには見当もつかないわ」
「ーーーアラン」
「ねぇ、ヒルト
あたしはどうしても憎めないのよ
暗黒戦争で敵対した種族や、魔族の命を奪いたいなんて思えない
それぞれ命を持ち、皆が意志を持って動くことは素晴らしい事だと思っていたわ。」
「・・・」
「だからかなー
メリッサが魔族に殺された時、あたしは悲嘆しかできなくて力を十分に発揮できなくて島を沈めることしかできなかった。
もし、此の先にまっている現実があたしにとって呆れた状況なら
きっと呆気にとられて力を発揮できないんじゃないかなって思う・・」
「夢を持つ限り、インドリームの力は発揮されるよ、アラン」
「え?」
ヒルトはアランに頷き、冷静に答えた
「アランが水のインドリームとして選ばれたのは
命を重んじる心をもっていたから。
そして種族関係なく皆が平和に平等に生きれる世界を作る
この夢さえ失わず持っていれば、きっとどんな辛い状況になっても
インドリームの力を発揮できると俺は思う」
「ヒルト・・」
「もし、夢を失いかけた時は俺が力になるよ
その為に来たのもあるからな」
「そうだったの?」
「他にも理由はあるけど、仲間が苦しんでる時
ほっておけないだろ」
揺るがない表情を見せるヒルト
アランはかつてのまっすぐな姿勢で夢に向かって生きていた
メリッサの姿と重なり、見えるはずのない涙が頬を伝ったように感じた
「ありがとう
あんたがリーダーでよかったわ、ヒルト」