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IN DREAM2

第10章 生命の源




「どお?
水族になった気分は。」

海面に足がついているが
まるで地に立っているように沈まず、浮いてもいないアランを見上げ
ヒルトは不思議そうに見ていた

「あ、うん
なんて言うか、普通に泳ぐ感覚と違うから戸惑ってるかな」
「そうよね
あたしは逆だったわ」

手を水面にかざし、一気に離す
水は吸い付くようにアランから離れず
全身を覆いつくしていく
波は強く呼応し、まるでアランが元の姿になることを歓喜するように船へ打ち付けた

「大いなる水がアランちゃんを迎えているのね
やっぱり、インドリームとして選ばれた者が本来の姿になり
故郷へ戻ると自然そのものが出迎えるなんて、すごいじゃない」
「自然そのものが出迎える、ですか?」
「そうよ
インドリームは各々の自然を操るということは
その自然、世界に選ばれた超越者。
そんな存在が故郷に戻る時、自然が出迎えないわけないでしょう?」
「ーーーなるほど」

フィオレとユリエフは水に包まれるアランを見つめながら
静かに話していた
時には荒ぶり、時には勇敢な姿を見せる船長フィオレの
優しい表情は船員にとって珍しく
船上はアランの本来の姿とそれを見守るフィオレの表情に圧倒され
静寂に包まれていた

「ーーーふぅ。」

包まれていた水が身を引くのと同時に
船に打ち付けていた波も静かさを取り戻していく

エメラルドグリーンの鱗を満遍なく下半身に広がり
大きな尾鰭は薄く、透き通る亜麻布のようで海のその奥まで見える
両手の指の間には水掻きの膜がはられ、両耳は4本の棘の胸鰭になっていた
髪色や瞳の色は人の姿の時と変わりはないが
肌は真っ白になり、所々に日光が浴びると反射して輝く真珠の原料となる鱗が見えた
胸には帆立貝の形の鎧が装着されている

地上で過ごしていた時に比べ、遥かに顔色がよく、水中で高速で泳ぎ、ヒルトの前に姿を現したアランに
インドリーム全員が目を丸くして見ていた

「・・なに?
水族を見たことないから、目の前で泳ぐだけがそんなに珍しくの?」
「そ、それもあるけど
こんなにも活き活きとしたアランを見るのも初めてだったから・・」
「あー、そっか。
ごめんね、久しぶりの海に少しはしゃいじゃったわね」

照れくさそうに小声で呟くアランに
ヒルトは微笑み返し、そのまま船の方へ顔を向けた



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