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IN DREAM2

第10章 生命の源




アランは飛行船から身を乗り出し、目を凝らして見つめる
そしてその先には海賊たちが一体の人魚を吊し上げ、捕獲していた

それはつい先に死体を回収して海底に消えていったはずの人魚だった
綱で首と手を締め上げられ、口には布を巻かれ、縄の中に入れられていく
抵抗する人魚を寄ってたかって蹴りながら笑う海賊達

「ふざけんじゃないわよっ!」

アランの怒りは頂点に達し、勢いよく飛行船から飛び降り、海賊船へ乗り込んでいく
「アランッ!?」
ヒルトの声はアランに届いていなかった
同族を痛めつける海賊への怒りで我を忘れ、魔力を最大限に出力し、海賊船へむかったため、周辺海はインドリームの力に呼応し、波を荒くしてゆく

「くそっ・・皆はここにいてくれ!
連れ戻してくる!」
「!」

ヒルトは焦りを感じながら風を全身に包ませ、アランを追い、飛行船から飛び降りてゆく
ユリエフ達は止める隙もなく、ヒルトをただ目で追うことしかできなかった
船から飛び降り、荒れ狂う波に触れる寸前で体を浮かせ、水面に対して垂直に海賊船の方へ飛んでいった

「いったいどうなっているのですか・・」
不安気に呟きながら座り込むユリエフに、クライヴは手を差し伸べ、状況を冷静に分析した
「・・おそらく、ここは水族の領域。
そしてあの海賊は水族から採れる貴重な素材を求めて、狩りをしていたのだろう」

「狩り?
水族から採れる素材って?」
「―――水族の角膜からは真珠がとれ、爪と水掻きは合成すれば鉄よりも鋭い短剣に作りれ、それは錆びることがない
鱗一枚は金貨3枚に相当する価値があり、肉は獣よりも栄養価が高く、貴族の女性の間では若返りにつながるともいわれている。」
「・・・・水族を・・人間は食べちゃうの?」
「ああ、土族のイリヤには無縁の話だろうが、普通の人間はそうだ
そして、金銭を求める海賊にとってみれば人魚一体の捕獲は
一年分の生活費を確保できたのも同然だからな
船が多少損害を追っても捕獲を優先するのだろう。
・・先ほど流れていた死体は恐らく、人魚をおびきよせる餌だ」
「じゃあ、アランちゃんが怒ったのは・・もしかして・・・」

「あいつが水族だからだ」
「!」

悲し気に呟くイリヤに応えたのはジェイクだった

「ジェイク君は知っていたのですね、アランさんの正体を。」



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