第10章 生命の源
アランが振り向いた瞬間、霧は晴れ、そこには大砲を放ちながら燃え盛る船が突如出現する
飛行船より倍大きいその船の先端には鎌を持った女神の装飾と、破けた帆には血で塗られたような真っ赤な骸骨が描かれいる
それは海を狩る賊の紋章であり、誰もが知る船・・海賊だった―――ー
黒く焼け焦げた匂いは潮風に乗ってインドリーム全員を包み
船は燃えていきながらそれでも何もない場所へ大砲を放つ
「なっ・・いつの間に?!
いや・・それよりもこの船・・どこへ大砲を放っているんだ?!」
ヒルトを含める全員は不思議に思っていた
霧がはれた状態で見えるのは難破しかけの海賊船
だが、海賊船が放つ大砲は空を撃ち、弾は海へ落ちてゆく
「・・違う・・あの海賊船、海に大砲を放ってるんだわ」
「海に?」
アランが指さす先には大砲が確かに海へ向けられ、そして海賊たちが碇や縄を海に投げ込み、何かを捕えようとしているのがわかった
そしてインドリームの飛行船の真下に流れ着く海賊の死体
血は海の中へ流れてゆき、ふやけた蒼白い死体を目指して
一体の人影が海底から現れてゆく
半透明な肌には鱗で覆われ
耳はつられるように尖っている
差し出すように死体を掴むその手の指の爪は鋭く、指と指の間には水掻きの膜が薄く存在する
水中に揺らめくその瞳は水を流したように青く、こめかみには鰓呼吸をするための器官がむき出しになっている
薄緑いろの長い髪を浮かばせ、現れたそれは水族の人魚だった
「――――!」
その人魚は死体を掴んだ瞬間に見える海上の存在に気付く
そして目線があった先にはこちらを疑うように見つめているアランがいた
アランも水族でありながら、人の姿に擬態し、本来の姿を隠している
それは触れて肌を触れば鱗の感触が伝わり、正体がわかることだが、見た目だけでは普通の人と区別がつかない
だが、同じ水族同士であれば外見だけですぐに判別がつけれる
人魚はアランが同族であると気付きながら
それでも声を発することなく、海賊の死体を回収して海底へ姿を消していった
「こんな浅い場所に水族がいるなんておかしい・・
じゃあ・・・あの船がしてることは・・まさかっ!」
アランだけはすぐり状況を理解することができた
船が朽ちかけようとしているにも関わらず、大砲を海へ向かって撃ち続け、碇と縄で何かを捕獲しようとしている海賊
![](/image/skin/separater53.gif)