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IN DREAM2

第10章 生命の源



さざ波の音はアランの心を和ませるものだった

インドリームとして旅を続け、久しく聞いていなかった故郷の音は激務に疲労していた肉体を休めさせ、空中にいながらもまるで海の中にいるような感覚だった

高度1000メートルを飛び続ける風は冷たく、ただの人間種であれば厚着をしなければいけないだろうが
もともと低温の海で暮らしていたアランには心地良く感じ、素肌で感じる潮風をいっぱいに吸い込む

「すぅー、はぁー・・」

深呼吸をするアランが両手を広げ、目をつぶっていた
「いい風だわー・・。
また海にでも入りたいわね」

久しく戻っていない故郷はどうなっているか。
暗黒戦争以来、深海へ移り住み、他種族との交友を絶った一族のその後の事に多少の不安はあった
インドリームになるまでは地上と海を行き来し、定期的に水族との交友もあり、状況が掴めていたが、今は一切の情報が入ってこないことに慣れなかった

「うぅぇー」
「・・・。」

現実に戻される声を隣で出していたのはイリヤだった
船から外に顔をだし、下へむかって吐き出し
顔は蒼白く、目は泳いでる
流れ出る液体は見るに堪えず、風が消すように全てを運んで落としていく
「最悪。
隣で船酔いして吐かないでよね、イリヤ。」
先までのアランの表情と一変し、嫌悪感を見せながら
イリヤへむかって話した
「うーん・・・
ごめんねー
イリヤ、土族だからさー・・空は苦手なんだー・・。」
「うん、わかるわよ
でも隣で吐かないでくれる?
下にはあたしの故郷があるんだけど。
上から吐かれるとすごく複雑な気持ちになるわ」
「ごめーんねー・・うぇっ・・。」
「―――はぁ。」
アランは深くため息をつきながら、イリヤの背中をさすり、持っていたハンカチをイリヤへ渡し、口を抑えた
「ユリエフ、少し高度を下げてもらえるー?
イリヤの船酔いがひどいわ
気圧の影響もあると思うのー!」

「わかりました!」
アランは空中で浮きながら船に魔力を注ぐユリエフへ目を視線を向けて話し、ユリエフはすぐに船を下げていく

「イリヤ、大丈夫か?」
「どうみても大丈夫じゃないでしょ、ヒルト
船酔いしてから3回もユリエフに治療してもらってるのにこれよ。」
「うぅー・・。」
「そうか・・慣れるまで時間がかかりそうだな
寝室で横になっておくか、イリヤ?」
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