第9章 ディオン連邦共和王国
クライヴは光が指す先を見つめ、しばらく沈黙する
その表情は空虚であり、心ここにあらずというべきか―――
ヒルトはクライヴの目線は光を指す場所であるが、別の場所をみている気がした
「クラ」
「ヒルト君、全員揃いましたし、船を完全に動かしてもよろしいでしょうか?」
「・・え、あ、うん!
よろしく頼む!」
ユリエフは軽やかに体を浮かせ、宝石の前に移動し、魔力を注いでいく
イリヤとライセイは地図を開け、無邪気に話なから次の場所がどこになるか賭けていた
対してアランとジェイクは小さな小競り合いのように言い争っているが、それは日常あるような二人のコミュケーションだ
ヒルトはいつ戻りの日常だと感じながら、次の場所へ向けて休息をするように仲間へ伝える
その隣で静かに見ていたクライヴは視線をユリエフへ向け、黙っていた
だが心の中ではずっと疑問に感じていた
ユリエフは聖人であるなら、暗黒戦争で闇族と戦ったはずであり、クライヴの暴走を阻止した現場にも立ち会っていた可能性がある
そうなればクライヴがどうやって意思を取り戻し、ヒルトと出会うことになったのか敬意を知っているはずだ
それなのに何一言話そうとしないのは何故か―――
監獄で全力で闇から救い出そうとしたあの姿は偽りでないと理解していた
だが、それでも疑問が残り、それが靄のように心にこびりつく
「クライヴ、どうかしたのか?」
ヒルトが視界の前に立ち、まるでユリエフを隠すように立つ
「・・・・。」
偶然とはいえ、あまりにも拍子抜けな表情に、クライヴはどこか和む
「・・なんでもない。
後でお前に話すことがあるが、今は休息をとるのだろう
俺が番をしておくから、お前は休んでいろ」
「あぁ、ありがとう」
夕暮れになる空の元、インドリーム達は休息をとるため、奥の寝室へ入る
船の上、一人空を見つめるクライヴ
各々が抱く夢は異なり、力を行使する理由も異なる
それでも世界はインドリームを必要としていた
しばらくの休息を与えんというように、船の下には海が広がり、しばらくは地上に降りたつことはないのだろ
宝石が指す光は夕焼けに重なり七色に輝きを放ちながら
南へ帆を自動で動かせ、インドリームを運んでいった
救いを求める者達の元へ――――――。