第9章 ディオン連邦共和王国
「貴方が・・こんな所で自由を奪われるわけにはいかない」
思わず口にした言葉はジーナにとって予想できなかったのだろう
アレックスならば何も言わず、見送ってくれると思っていた
だが、言葉にしてでも留めようとする
それだけでも、ジーナは胸が熱くなっていた
それでもアレックスにはジーナを留める力も権利もない
王族や貴族とまともに口が聞けるほど、身分は高くない
来る日も来る日も国の警護や周辺領域を巡回し、兵士としての役目を果たしている中
1人の女性と出会う
その女性は長い銀髪にウェーブをかけ
黄金の瞳を持ち、金色と透明な亜麻布で身を包んでいる
そして背中には4本の全身を覆うほどの翼を生やし、アレックスの前に立ちふさがった
荒地と離れた場所には森がある地域で、馬を走らせていたアレックスはすぐに目につく容姿であり
それは天族だと判明する
「ーーー失礼。
貴女は天族ですか?
僕はディオン連邦共和国の兵士、アレックスという。
こんな所で一体何を?」
「アレックス君ね
私は天族第6聖人。
浄化された魂の転生を管理する者です」
「魂の転生を管理?
・・そんな方が僕に何の用が?」
アレックスは馬から降り、天族へ歩み寄る
近くで見ると女性の服はダイヤモンドを散りばめたように輝き
肉体は透けていた
「あ、そこで立っててくださいませんか?
一定の距離に近づくと、護衛の者達が襲ってしまいますので」
「護衛?
僕には貴女しか見えませんが・・」
「そうですね。
でもねーーー」
天族の話の最中、アレックスの頬を鋭い刃が通り越し、後方の地面に突き刺さる
「っ⁈」
目視できなかった物を見るために振り向くと
そこには金色に輝く透けた剣が突き刺さり、まるで人が動かしているように剣だけが動く
「例え獣族であろうと、天族の霊体は捕らえられず、
こちらからの攻撃は効いても、そちら側からの攻撃は効きません。
・・ですが、勝手に動いた事は許せませんね」
天族は指を鳴らすと光を放つ純白の鎖が空間から出現し、霊体で剣を握る護衛を縛り上げる
「なっ」
鎖は永遠に伸びてゆき、対象の護衛に巻きつけ
そのまま姿を消していく
「ふぅー。」
静寂に包まれる空気の中、天族のため息はハッキリと聞こえる