第9章 ディオン連邦共和王国
ユーインの説得に、無言のままヘイデンは魔人を消し
心を鎮めようとしていた
安堵のため息をつき、軽く手を振るユーイン
「それじゃあね、アレックス
また僕達と会うことがあるかもしれない
けどその時は、君が魔族になっていないことを願うよ」
「ーーあぁ。
ありがとう、ユーイン」
「アレックス!」
声を荒げて呼び止めるヘイデン
静かな森の中に雨音以上に響く声
「その耳につけているピアス・・抑制装置は如何なる時も外してはならんぞ
それがあるからこそ、お前は自由にいられるのだ
それと、その抑制装置をお前が外さないか、または狙う者がいないか監視させてもらう
何か怪しい動きを見せれば、すぐに殺す」
「ーーーそうか。
安心してくれ、ヘイデン
僕はこのピアスだけは外さないと約束するよ」
森の中へ去っていくアレックスを見送る
2人の表情は曇っていた
それはアレックスのように組織へ入るも
己の欲を優先して出ていく者を数えきれないほど見送ってきたからだ
結末は決まって、闇へ堕ちて組織の者が後始末をすることになる
アレックスにもこれから同じ事が待っていると思っていたヘイデンは
何が何でも止めようとしていたのだ
夢を持ち、ディオン連邦共和国の正式な兵士として入団したアレックスは
兵士として過ごす中、自然を無くし、人間種が多く移り住んできたため、中心街から住処を無くした獣族に目がつく
貴族や王族は獣族の事など考えず、私腹を肥やす事しか考えていない政策を作り上げるが
ジーナだけは全て平等だと言い放ち、アレックスの自宅にも足を運び、多くの獣族と仲を深める
だが、幸せな日はすぐに消え去る
アレックスが兵士として入団して数年後ーーー
隣国と和平を結んぶために顔も知らない歳の離れた王と
結婚することになったと告げるジーナ
アレックスの優しい表情は歪んでいく
それはジーナ自身の表情を写したように
ジーナと同じものだ
国のためとはいえ、好きでもない男と結婚など
少女であるジーナにとっては屈辱でしかない
勿論、ジーナを守りたいと思っていたアレックスもだ
まだ幼き少女に課せらには重すぎる使命
何としてでも自由にさせてやりたいーーー
かつて、狼族の純血という理由で前線に立たされ、魔族によって殺された妹ジュリとジーナが重なる
ジュリへ向ける気持ちをジーナにも向けるアレックス