第3章 半魔
右腕を抑え、痛みに震え、戸惑うエリンシエに
ユリエフは手を握りしめ、優しく声をかてる
腐食されていた腕は瞬く間に白い肌に戻り、
痛みは幻のように消えた
「腕が治った・・!
そんなっ・・今までどうしようもなかったのに!
どうやって治したの?!」
「天族特有の治癒術に、インドリームの光の加護を加える事によって、特別に腐食を治癒することができます」
正常に動く右腕を見つめ、エリンシエと結界師達は動揺を隠せなかった
「エリンシエ、話して欲しい。
結界師として活動している本当の目的を。
魔族と人との共存の他に、隠してる目的があるんだろ?」
「・・・」
ヒルトの問いに、黙り込むエリンシエ
「話してください、貴方の先ほどの話では
生け捕りにした魔族を自己流で共存へと導く、と感じ取りました。
そんな事をできる、と教えた存在も気になります」
「・・・それは・・」
「長、話しましょう。
彼等なら力になってくれるはずだ。」
「我々だけの力では行き詰まっていたところですし」
困惑するエリンシエに、結界師達が次々と説得へ試みる
暫く沈黙を続けた後、エリンシエは立ち上がり、口を開いた
「付いてきて。
見せたいものがあるわ」
静かに話しながらエリンシエはギルドへと戻り
ヒルト、ユリエフは一階のバーカウンターへ腰を下ろした
魔族討伐の要請書と指名手配書が貼り付けられているボードに手をかざすエリンシエ
直後、ルーン文字が浮かび上がり、ボードは消え、一つの禍々しいブレスレットが浮き上がった
「その魔力・・闇を感じます」
警戒するユリエフ
ボードの裏側から取り出されたブレスレットと、身につけているブレスレットを並べるエリンシエ
「この二つは私に結界術を教えてくれた師匠がくれたものよ。」
「エリンシエの師匠が?」
「そう、師匠は私の兄を救い、私に生き残る術を与えてくれた。
そして、いつか魔族と人が共存できる街を作りたいと言っていたわ」
「・・」
黙って話をきくヒルトとユリエフに
エリンシエは冷静に話続けた
「元々、兄は半魔として生まれた事によって、感情のコントロールはおろか、魔力の制御もできなかった。
だから親がいない私達は身を隠しながら孤児として生きていたの」
「半魔・・ですか」