第9章 ディオン連邦共和王国
フォークとナイフとスプーンが使用順に並べられているが
料理は既に並べられている
加熱が必要な料理だけは使用人が運んでくるこの風習は
人と獣族が混ざって成り立っている国ならではだろう
人だけが住む国ではスープ、前菜などが順に出される
だが獣族は料理に順番など求めない
テーブルに出されたもの全てを
好きに口にして良いのだ
それゆえ、フルーツやパン、生野菜などは既に食卓のテーブルに並べられている
カンス神官は白い布巾を首元に巻き、服が汚れないようにすると
上品にフォークとナイフを使い分けながら
使用人が提供する料理を食べていく
「この国の料理が勇者様のお口に合うかはわからんが
どうであろうか?」
「ーーーとても美味しいですよ
こんな贅沢な夕食に招いていただいて感謝します」
ヒルトはカンスの機嫌を損ねないよう
最大の注意を払いながら会話を続けた
「はっはっはっ
若くしてそんな礼儀正しく、更に世界を救う勇者であるインドリームとは感心じゃな
もっとリラックスして話してもよいのじゃよ
・・だが、お主達ならばこの国もこの世界すらも救えるじゃろうな」
「恐れ入ります、カンス神官
唐突な話ではありますが、この国の事について教えていただけますか?」
「天族の方が地の種族に関心があるとは、素晴らしい
ワシが知っている事であれば何でも話そう」
「・・ありがとうございます。
早速ですが、今この国で1番の問題は闘技場でアレックスさんに優勝され、王権を剥奪される可能性があるということですよね?」
「え?!」
「ーーーほぉ。」
ユリエフの唐突な問いに、カンスより先にヒルトが取り乱す
対してカンスは動じず興味深いというような表情でいた
「ユリエフ嬢よ
何故そう推測するのじゃ?」
「闘技場でアレックスの言葉に
過剰に反応した王様とあなたの行動が気になりました
例え種族間で差があろうとも、仮にもアレックスさんは王国の近兵。
あそこまで派手に体罰をする必要はないでしょう
あれはまさにアレックスさんのプライドを崩すように
私達に見せつけているのでは、と思いました。」
「素晴らしい
その通り。
ワシらはアレックスには優勝してほしくはないのだ
優勝すれば王権だって手にする事が出来る
獣族の中で人が王権を持つ事に不満を持っている者は多く、アレックスもその1人じゃだからな」