第9章 ディオン連邦共和王国
ヘイデンはクライヴに背を向け、ユーリンと魔人と共に路地裏の闇の中に消え、姿を消していった
「――――ラルザ、奴らを監視しろ」
「はい」
「サルナス、アークは国を見て回り、この国の常識を学んだ後に
闘技場に参加するようにエントリーしろ
基本は二人で行動し、俺との連絡はミレイアの蝶で行え
指示は追ってする。
それまでは闘技場の戦士としていろ。」
「畏まりました。」
「仰せのままに。」
「クライヴ」
心配そうに声をかけるミレイア
「私の幻影術は彼等の魔力消費に関係してくるわ
闘技場で無理な戦い方をすると、姿が元の死体のものに戻り、憑依も難しくなる可能性があるわ」
「―――了解した。
それも踏まえて指示をだす。
俺がインドリームと行動し、お前達からの伝言に応えられない時は
ミレイアに報告し、後ほど俺に教えてほしい」
「わかったわ」
クライヴは全員に指示を行い、路地裏から街道へ戻った
獣族と人が賑わう街道を歩く中
前方から酔っ払った牛人と狐族の戦士がふらつきながら歩き
クライヴにわざとらしく体を当てる
黙って過ぎていくクライヴに
牛人は鼻息を荒くしながら肩を掴み口調を荒くし
喧嘩を売るように話す
「お゛いぃ。
てめぇ、俺にぶつかっておいて無視かぁ?!」
「人間の闇堕ちごときが、生意気だぞ」
「――――どこの種族もこういう奴はいるのか」
「あ゛ぁ?!」
クライヴは肩に触れていた牛人の手を片手で持ち
そのまま軽々しく体を浮かせ、地面に叩き付ける
「う゛ぼぉ?!」
「あ、あにきぃ!」
惨めな声を上げながら牛人はたたきつけられた腰に手を当て
狐人の戦士は焦りながら駆け寄る
「・・まだするか?」
クライヴは牛人を睨みつけ、瞳を赤く光らせ
完全な敵意を見せる
「それくらいにしてやってくれないか」
「!」
黒い髪に山羊の角
腰からは狼の尻尾を生やした獣人族の男が王国兵士の服と鎧を装着し、クライヴへ近づく
その姿に、街道を歩いていた者たちは道を開けていく
青い兵士の服は国の中でも王族の近兵隊が着る者であり
通常の兵士より階級が上である
「ア、アレックス!」
牛人と狐人の兵士は声を合わせて兵士の名を呼び
酔っていた酒が飛んだような表情をする
「まったく、僕の店で昼間から飲んでくれるのはうれしいが、騒動を起こしていい事にはならないぞ」