第8章 監獄と闇の騎士
「とある女性と二人で・・世界を救うと誓った光景・・・かな。」
「とある女性?
つまり、風族で育った幼初期の記憶ではなく
別の光景がもっとも古く、その次に幼初期か」
クライヴの問いに、ヒルトは静かに頷いた
「なるほど。
道理で人の身でありながら、俺やユリエフより物知りで落ち着いた判断力ができているわけだ」
「?」
クライヴは闇の球体を右手に出し
左手には魔法陣を浮かばせた
「これは闇族の実験で試験されていた転生の工程だがな」
冷静に話すクライヴに、ヒルトは静かに聞くことにした
転生という単語を聞くだけで、だわつく感情がこみ上げるが
それでも抑制し、なんとか平然を装う
「魂と記憶と心を肉体から引き離し、時間軸を超えた禁術で保管し、他者の肉体に植え付ける」
右手の黒い球体を魔方陣の中に埋め込み、一つの闇の人形を造り出し、説明をわかりやすくする
「記憶を植え付けられた者は己の意志と同時に、他者の記憶を引き継ぎ、心は心を・・魂は魂そのものを引き継ぎ、元になった人物を3人に分けて現世に呼ぼすことができる。
それが転生術だ」
「なんだよ・・そんなこと・・」
「あぁ、もちろん非人道的で自然の摂理に反している
だが、闇族や闇の神には関係ないことだ
奴らは転生術を成功させ、闇族を永遠に滅びない種族にしようとした。」
「―――――。
記憶や心を植え付けられた存在は、いつか乗っ取られるのか?」
「乗っ取るまではできない。
だが、受け付けた種となる者の意志や記憶に共鳴し、その者の志を引き継ぐことになる」
「・・・。
俺も、転生した存在なのか」
「可能性としては、な。
だが、転生するために3つに分離することで成功率は低下し、実際成功した事例はなく、解術方法も見つかっていない」
「もし、俺がとある人物の記憶を植え付けられた者で
意思を植え付けられた人と接触したことがある、と言ったら?」
「?!」
ヒルトは夜空を見上げながら、過去の事を語る
「昔、俺が変な記憶に悩んで風族を抜けたことがあったんだ
まだインドリームでもなかった俺は、放浪し、衰弱した
そこである人と出会い、俺の中に眠る記憶に共感してもらえた」
「まさか・・・それがゲートで話した異能力者か?」