第8章 監獄と闇の騎士
ユリエフが操縦する飛行船は夜空を飛び続けている
監獄から帰還し、疲労していたことから
ユリエフは奥の寝室で休み、クライヴは一人、飛行船の上で夜空を見上げていた
「起きてるんだな、クライヴ」
「!」
同じく飛行船の上に来たのは風をまとわせ、浮いているヒルトだった
「・・つくづく便利な能力だな、風を司るとは。」
「体を浮かすぐらい、クライヴだってできるだろ?」
ヒルトはクライヴの隣に座り、明るく話した
「なぁクライヴ
ゲートを通っている途中、俺が何者なのか聞いてきたよな」
「・・ああ、それがどうかしたのか?」
「その事で、話しておこうと思うんだ
全てじゃないけど・・今言えることを。」
「・・・。」
クライヴは沈黙し、ヒルトが話し始めるのを待っていた
「俺は、ただの人間じゃないと思う」
「なに?」
ヒルトの突発的な言葉に、クライヴは戸惑う
「俺、インドリームとして目覚める前から記憶が曖昧でさ
風族として生まれたのは間違いないと思うけど、俺が知らない記憶も持ってて、旅を続ける旅にその記憶が鮮明になっていくんだ」
「他人の記憶をもっているとうことか?」
「どうなんだろう
他人とも思えない感じだな
俺の知らない人や風景、感情さえも含まれてる。
実は、クライヴと最初に出会った時も、この記憶がきっかけだったんだ」
「!」
「俺が一人でインドリームとして旅を始めた頃、森で倒れていたクライヴを見つけた時は戸惑った
どうして闇堕ちがここに、と思ったんだ」
「――――。」
「けどそんな事より、クライヴを助けて、力にならなくちゃって思った
同時に・・どこか悲しい感情もこみ上げてきて、わからなくなったんだ
気が付けば、体が動いてた。」
ヒルトは当時の感情や行動について鮮明に語り
きっかけは未知の感情から始まったと伝える
その内容に、クライヴは黙っていることはできず
聞き出したかったことを、今すぐ確認することにした
「ヒルト、単刀直入に聞く
お前はいつの時代の記憶が一番古い?」
その問いには深い意味が込められていた
人の歳で生きているなら、風族と過ごしていた幼初期であり
人ならざる者として生きていたのなら、それ以前の記憶になる
「――――俺の一番古い記憶は・・・―――――」