第8章 監獄と闇の騎士
完全に消えさった鬼神は堕天使の名を口にすることなく
水の泡と共に消え去った
激流の中、堕天使に語り掛ける男の声が響いた
「戻ってこい、アルトリア
次の計画へ移行する」
「あら、もう見届けなくてよろしいのですか、シャルゼ様?」
堕天使アルトリは余裕な笑みを浮かべ、男の名を呼び、対応した
「フッ・・あんな出来損ないに用はない」
「鬼神製造計画時はかなり気に入られ、監獄を任せ、契約を交わした人工神でも
息子さんに負けると興味なくなられるのですか?」
「愚問。
クライヴさえも不完全なままであるが、それに負ける個体など、私が作り上げた実験体だとしても興味など一切ない」
「・・そうですか、了解しました
そちらに向かうとしますね」
アルトリアは姿を消し、その場には何も残さずシャルゼの元へ向かった
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クライヴは目を覚ます前、わずかに鬼神の夢を見た
それは他種族との交配によって生み出された赤子を
闇の実験台として使用し、人口的に鬼神を作り上げるものだった
闇の神がクライヴを造りだしてから数年後、数多の生命や神、異業種、魔獣を作り上げる実験を繰り返し、鬼神はその中に生まれた
闇の神がクライヴの闇を強めるために作り出した人工神
監獄を管轄させることで闇の狂気をため込ませ
クライヴが落とされた時、戦わせるための道具であった
鬼神がクライヴを闇に堕とすことに執着していたのは
そうしなければいけなかったからであり、達成しなければ存在意義すらも失くしてしまうからだった
多くの人の魂を鬼へ変え続け、生涯の記憶を観たことで生命の始まりの美しさ、儚さという感情移入が芽生えていた鬼神。
ミレイアと同様、人に触れることで温もりを求めようとしていたのだ
鬼神にとって、造り主のシャルゼが父親に値する
父親から任された仕事を達成すれば、認めてもらえる―――ー
そう信じ続け、子供が親に振り向いてもらうためにがむしゃらに努力するのと同じことをしていたのだった
闇の狂気に常に触れ続け、狂っていた鬼神だが
求めていたのは、儚い夢のような願望だ
最後に鬼神の魔力がクライヴの物と混ざったことで見た鬼神の過去
クライヴにとってどうにもできない過ぎた物語
それでも、同情してしまった
同じシャルゼによって生み出された者として―――。