第8章 監獄と闇の騎士
『多くの人の魂を鬼と化すために鬼神へ渡し、その都度人の感情や思い出を見て、人の儚さ、美しさ、残虐さを知り、そして・・あなたを見つけた』
「俺を?」
『あなたがヒルト・クローズと出会い、記憶を見つけるために魔族の魔力を奪っていたでしょ?
その魔族の魂は報われず、監獄へ送られるのよ』
「!?」
『記憶喪失だったのですもの、知らなくて当然よね
でも、そのおかげで私は貴方が成長し、あなた自身の意志で生き、旅をし、心から信頼できる友達を見つけている事に・・うれしかった』
片腕を掴みながら、震える声で話し続けるミレイア
『ずっと・・あなたを騙し続けていた・・哀れな蝶だけど・・』
「・・ミレイア・・」
『でも、私の本当の夢はね・・
貴方が報われること、だったの』
「・・!」
『私なんかより、くらべものにならないほど多くの苦しみや呪いを受けてきたクライヴ。
それでも、必死に夢を諦めず、闇の神の恐怖にも立ち向かおうとした貴方にだけは・・・その夢が叶ってほしかった』
優しい背顔で話すミレイア
だが、その背後から鎖が伸び、ミレイアの腕や腹、全身を縛り、闇の中へ引きづりこむ
「ミレイア!」
「ミレイアさん?!」
『っ・・時間ね・・。』
諦めたように言葉を吐く
『クライヴ』
鎖を巻かれた右手を前へ差し出し、最後の力を振り絞り、話した
『愛してるわ』
「ミ・・レイア・・」
ミレイアの手を掴もうと、するが、先にミレイアは闇の中に引きずり込まれ、一瞬にして姿を消した
「っ!!」
怒りが込み上げるクライヴ
渦巻く闇の中、少年の笑い声が聞こえた
不気味で、狂気を感じさせる声は次第に大きくなり、姿を現す
額に1本の角を生やし、白髪は短く、こめかみ辺りから延びる横紙の毛先に金色のリングを飾り
赤と青のグラデーションがかかった着物と羽織を着た鬼の少年
「御機嫌よう、インドリーム諸君、そして闇の王子様」
ニヤリと笑う少年の歯は尖り、口は異様に裂けている
「はじめまして、おれっちは鬼神、阿須羅と申す」
鋭くつった目はヒルトとユリエフを睨みながら話した
「お前が鬼神・・!」
武器を構えるヒルトとユリエフ、クライヴ
「おれっちの精神世界に土足で踏み込んでおいて、ミレイアと仲良くおしゃべりできると思ったかな?」