第8章 監獄と闇の騎士
暗闇の中
目を開けるように、意識が戻るのがわかる
次第に周辺は明るく灯され
風が吹いている感覚がした
「ーーーー・・?」
ヒルトは辺りを見渡し、立ち上がる
実際の肉体ではないが、鬼神の精神世界にいるヒルト、ユリエフ、クライヴは己の体をもち、武器を構えた
遥か彼方の塔の頂上
そこから見える景色は森と業火で燃え盛る町
天から降り注ぐ光はの球は地上へ落ちていき
輝きを失っていく
「・・暗黒戦争時の光景だな」
心当たりがあるクライヴは
辛い過去を思い出す
「クライヴ、この塔は一体?」
「・・暗黒戦争時、闇族が管轄し、ミレイアを守っていた塔だ
俺はあの時、迫り来る天族を殺し、この頂上へ向かった」
「ーーーではあの落ちていく光は・・命が尽きた
天族なのですね」
ユリエフは燃え盛る光景を見ながら問う
その答えは、クライヴが無言で頷き全てを察する
「ミレイアはこの塔で命を落とした・・
俺が殺したんだ」
「!?」
クライヴの言葉にヒルトは驚く
過去の光景を見せつけられるクライヴは
静かに、冷静な表情で話している
「あの日、シャルゼによって闇の騎士を監獄に落とされ、闇を抑制させることさえも出来ず、ミレイアをこの手で殺し・・
絶望でしかなかった俺は全てを呪い、憎み、暴走した。」
「ーーーー暗黒戦争時、闇族の最終兵器として
利用されている者がいると聞きましたが
貴方だったのですね、クライヴ君」
ユリエフの問いにクライヴは失笑して答えた
「笑えるだろ
シャルゼに化け物として成長するために生み出され、わざと意思を持たさせ、最後に全て奪われ、絶望したんだ
最初から何も手に入れることは出来なかった・・
そう、わかっていればミレイアは呪われずにも済んだ」
『それは違うわ、クライヴ』
「!?」
突如現れた声はクライヴの背後から発せられ
振り向いたそこには赤い蝶の羽根を生やしたミレイアが立っていた
「ミレイア?」
身構えるクライヴ、ヒルト、ユリエフ
だが、ミレイアは両手を軽く上げ、優しい話した
『私は本物のミレイアよ。
鬼神の中で眠っていた・・本物の魂。』