第8章 監獄と闇の騎士
だが、今となっては鬼神を消滅させ、ミレイアを呪いから解き、同時に己の存在自体も消すことができれば、どれだけ楽か
過去に行った殺戮や苦しみは、忘れておけばよかったのかもしれない
インドリームと共に旅をし、協力はできても、いつかまた闇の神の操り人形となり、己の手で殺してまう可能性がある
すでに、ミレイアを救うためなら、闇の力を使用し、かつての部下であったアークを傷つけることに
なんの躊躇もなかったからだ
体は勝手に動き、口からは心にもない言葉が簡単にでてくる
アークの右目をえぐり取り、魔力を奪った瞬間
どれほど心の中で叫んでいたか――――――
その声は誰にも聞き届けられることなく
本心を理解されることもない
インドリームの力を使用するとどれほど危険な目にあうか
クライヴは分かっていた
だからこそ、ヒルトとユリエフと再会したとき
希望には感じなかった
能力が使えないインドリームは、ただの子供だ
まさか己の危険を顧みることなく、この監獄でインドリームとして力を解放することはない
そう、決めつけていた
頭の中で意思がかき消されないよう、必死に考え続けていたクライヴ
そして、ミレイアがいた湖までたどり着く
その光景は、初めて彼女と出会った場所と同じ光景であり
懐かしさを感じさせられた
背中から透けた赤い蝶の羽を生やし、悲しそうな表情をしたミレイアがクライヴを見つめ、湖の上で浮いてるように立っていた
「・・・クライヴ・・・」
刹那の声
とても再会できたことを喜ぶものではない
「ミレイア・・」
お互いが見つめ合う瞬間
時が止まったように、周囲の音は聞こえなかった
クライヴは再び見ることができたその姿に
ほんの少し、安心感を感じていた
だが、ミレイアは快く受け入れようとしなかった
「どうして、来たの」
「え」
「私は何度も忠告したはずよ・・ここに来てはダメ、と。」
「・・・。」
「それでも来てしまった・・もう、手遅れよ
鬼神は貴方を壊そうともうそこまで来てる」
「・・・もう、過去の俺とは違う
鬼神を消滅させる術も、あんたを自由にさせる術も、知り、力をつけてここに来た」
「・・・。」
クライヴの言葉は、ミレイアにとって希望であるはずだった
だが、暗く悲しい表情は更に深くなっていく
「そうね・・ある意味貴方は変わったわ」