第8章 監獄と闇の騎士
サルナス、ラルザは一気に走りだし、ヒルト、ユリエフもついてくのに必死だった
「最悪の事態とは何なのですか?!」
ユリエフは声を大きくしてラルザに問う
「クライヴ様の暴走・・赤い蝶が闇の力に反応し、あの方の負の感情を高めることよ!」
「?!」
「記憶を取り戻し、かつての夢を叶えるため、クライヴ様は鬼の魂を吸収されたの
その時、赤い蝶がクライヴ様と接触していれば、あの方は闇に堕ちていく・・!」
ラルザは焦った表情でユリエフに事態の緊急性を説明する
「だったら、クライヴ以外に感じるこの魔力は
もう一人の闇の騎士のものなのか?!」
「そうよ、ヒルト・クローズ
名はアーク・・大魔術師だからクライヴ様をお守りさせるため、あの場所へ置いてきたのだけど・・・」
「我が主が闇に犯され、赤い蝶の意のままに動かされている場合、更に力を目覚めさせるために必要な魔力をアークで補充するだろう!」
「魔力を補充?」
サルナスとラルザに唐突な話に、ヒルトとユリエフは完全に理解ができないまま
ただひたすら走り続けた
森を抜け、壊れかけた石畳の橋を越え、廃墟になった城跡が見えてくる
黒く焦げた旗と、周辺は燃える黒い炎
未練として彷徨う魂や、人型の影は動かず、ヒルト達が向かう先をただ見つめていた
黒い煙は更に勢いを増している
錆びた鉄の巨大な城門を潜り抜け、更に奥へ進んでいく
石の壁には所々に氷柱が張り付くように出現し
道には赤い血が飛び散った後や、雫になってこぼれおちている
血痕をみた闇の騎士の二人は、それが誰のものかわかったのだろう
更に足を速め、複雑な城内を迷うことなく走り続ける
進めば進むほど、闇の魔力が強く感じ、同時に別の魔力が弱まっていくのを感じた
そして、割れた窓ガラスにかすかに映り込むのは
赤い蝶がとんでいる大広間
大広間はかつて王が貴族と謁見をおこなっていた場所であろう
だが、今は面影はなく、玉座が備えられていた場所には
巨大な穴が空けられ、隕石が落ちたような円形に地面がえぐられていた
穴から黒い炎と煙が湧き上がる
サルナスとラルザは躊躇なく近づいていく
だが、穴の中へ入ることなく、おの足を止めた
それは、その先にあった光景が目を疑い者ものだったからだ
「・・・我が・・主よ・・」
「!」
かすかに震える声でサルナスは小さく呟いた