第8章 監獄と闇の騎士
「そうだな・・だが、彼女はただの未練とは違う
赤い蝶に喰われたことで監獄に永遠に縛られ、鬼神と繋がっている
故に、我々は彼女の元へ主を近づかせるわけにはいかない」
「ミレイアさんの背後には何かいたと思ってたけど
まさか鬼神だったなんてな・・」
「気づいていたか」
「ああ、ミレイアさんと会って話をして
赤い蝶を出した時に感じたんだ、闇の強力な魔力を。」
全てを見据えたように話すヒルト
その様子を見ながら話していたサルナスは感服していた
己の主が認めた友――――
生来、友と言える存在と出会うことはないと宣言していたクライヴを何十年、何百年と長い年月、共に仕えていたサルナスにとって
ヒルトは信用に値する存在であると、確認が強まっていく
この者なら、クライヴを救えるかもしれない
そう、心で感じていた
「鬼神と彼女が繋がっていると言ったが、厳密にいえば
彼女の未練を鬼神が利用している、というだけになる。
彼女は鬼神が放つ魔力や監獄の瘴気と未練が結合することによって、生きているように話すことができ、姿を現すことも可能なのだから・・・」
「ミレイアさんの意志に反することでも、せざるを得ない状況ということか」
これからクライヴに会った際、どう告げるか考えるヒルト
もし、クライヴが記憶を取り戻し、ミレイアに会いに行けば鬼神が襲ってくる
それでも、ミレイアのもとに向かう前に止めるとなれば、衝突はさけれず、インドリームの力を使用することは避けれない
双方好ましくない結果しか生まれない状況で、更に悩み続ける
「ヒルト・クローズ、一つ、頼みたいことがある」
「?
頼みたいこと?」
「ああ、我が主の―――――」
サルナスがヒルトに話しかけた瞬間
そう遠くない場所へ巨大な魔力の爆発が発生し、衝撃波の暴風がヒルトやサルナス、ユリエフ、ラルザを襲った
「な?!」
「っ・・!
この魔力は・・まさか!」
風が吹き荒れ、爆発が起きた場所からは黒い煙が発生し
サルナスとラルザは表情が歪んでいく
「サルナス、あの場所はクライヴ様とアークが!」
「わかっている・・
インドリーム、急ぐぞ・・ついてこい!」
「え?!」
「どうされたのですか?!」
「あの場所に我が主と、もう一人闇の騎士がいる!
だがこの暴走しかけた闇の魔力は・・最悪の事態に近い!」