第8章 監獄と闇の騎士
ヒルトは大剣を構え、ユリエフと背中をあわせ、静寂な森へ目をむける
わずかにヒルトが一歩動こうと足を動かした瞬間
ユリエフとヒルトの視界から闇を纏ったナイフが飛び
防御壁に刺る
先のナイフと同じように見えるが、ナイフには鎖が繋がり
刃の先から防御壁へ闇を流し込まれていく
「?!」
「これはっ!」
闇に汚染されていく防御壁
危険と判断したユリエフは強制的に術を解除し、ナイフにつながる鎖へ魔導弓を飛ばす
ユリエフの弓によって鎖は砕けちる
だが、粉砕された鎖は瞬時に修復し、鎖はユリエフの腕へまきつけ、そのまま森の中へ勢いよく引っ張られた
「ユリエフ!」
ヒルトはユリエフが連れ去られた場所へむかおうとするが、己の背後から黒い炎を纏わせた剣と大盾をもった
漆黒の騎士がすぐそこに迫っていることに気付く
「っ?!」
体勢を半回転させ、大剣で騎士の一撃を防ぐ
「・・・忌まわしき力だ」
「!」
黒い兜の奥から見える赤い瞳の光
頭部から悪魔の角のようなものを形作り、全身を闇と炎で包んだ騎士はヒルトへ殺気を放ち
左手で持っていた大盾でヒルトを突き飛ばす
近くの木に叩き付けられるヒルトは咳き込みながら
すぐに立ち上がり、黒騎士を睨んだ
「お前・・いや、お前らは一体何者なんだ」
「・・・貴様ごときに名乗るほど、安い存在ではない」
ドッと風をふきあらせ、一気にヒルトの目前にせまる黒騎士
ヒルトは視界の焦点を合わせる事と、黒騎士のスピードについていけず、繰り広げられる斬撃を防ぐことしかできなかった
「くっ!」
大剣によって急所は防げるが、それでも脚や腕など、わずかに傷をおっていく
一方的な黒騎士の攻撃のすきを突き、ヒルトはわずかにインドリームの力を使用し、風の刃を黒騎士の胸部に直撃させた
風の刃は黒騎士の体勢をよろめかす程威力を持ち、ヒルトは続けて大剣で攻撃をしかける
先との逆の戦況
ヒルトはインドリームの力が僅かでも有効なことに気付き、勝機を感じながら戦い続けた
「はあぁぁっ!」
ヒルトは黒騎士の兜へ目掛けて大剣を薙ぎ払い
衝撃で兜は吹き飛び、黒騎士の素顔があらわになった
長い金髪を一つで束ね、瞳は血を流したように赤く
両耳の先を少しとがらせた男
その表情は兜を吹き飛ばされたにも関わらず、冷静であった
「まさか・・闇族?!」