第8章 監獄と闇の騎士
「!?」
とっさに大検を構えるヒルトはユリエフを抱き上げ
森の中を一気に駆け抜けようと走り出す
「ちょっ、ヒルト君!?」
「ユリエフ、あいつらは危険だ!
今の俺達じゃ」
抱き抱えながら全力で走るヒルト
だが、右足に後方から飛んでくる黒いナイフが擦り
ヒルトはバランスを崩し、その場で崩れていく
「っ!」
「ヒルト君!」
足を抑えるヒルトへユリエフは駆け寄る
たが、ヒルトの後方から瞳を真っ赤に光らせた
黒い影が迫っているのがわかった
今、インドリームの力は使えない
いや、使えば鬼が魔力に反応して寄ってくる
そうならないように天族のキャリーから渡されたネックレスには
帰り道のゲートを開く力と同時に、インドリームとしての力を抑える効果を宿している
能力を自由に使用できない状態で、ヒルトを守る術
それは天族の法術、つまり魔力の刃で作られた波動砲や斬撃といった
単純な魔力系の攻撃しか使用できなかった
「天よ、私に力を!」
ユリエフは即座に作り出した魔力の防御壁で周辺を覆い
迫りくる影から放たれる無数のナイフは防御壁を中心に円形を描いて浮かび
一気にヒルトとユリエフに目掛けて襲ってくる
飛ばされるナイフには闇がまとわりつき、刃の切れ味は通常のものより増していたが、ユリエフの防御壁には敵わなかった
防御壁に当たったナイフは全てはじき返され、纏っていた闇を消滅させ、その場に落ちていく
効力があるかわからなかったが、それでも賭け、防御壁を展開したユリエフは
緊迫し、鼓動が強く鳴り響いていることがわかった
「はぁ・・はぁ・・」
敵の攻撃は弾いたが、一切姿を現さない状態が続き、
周囲を警戒するユリエフ
しばらく静寂が続き、ユリエフは右足の傷をおさえているヒルトへ目をむけ、敵の攻撃がやんだことを確認し、その場に座り込み、治療をはじめた
「大丈夫ですか、ヒルトくん」
「っ・・ああ、かすり傷だから大丈夫だ
けど、ありがとう・・」
「気にしないでください
それより、敵の姿がみえないのは厄介ですね」
ヒルトの傷を完全に治癒したユリエフは再び周辺を見渡す
「たしかに・・けど、感じたあの殺気は危険な相手だと
俺は思うな
それに、あの殺気はクライヴのものと似ていた」
「クライヴ君のと?」
「ほんの少し、だけな」