第8章 監獄と闇の騎士
「アーク、先の拘束した鬼たちを全員、俺の前へ差し出せ」
「!」
「すべて吸収する。
鬼の魂と、その記憶を吸収し、なにか情報を得られるか確認したい。」
「・・よろしいのでしょうか
一気に吸収すると、それ相応の拒絶反応と闇の狂気が貴方様を襲うでしょう」
「それでもだ。
危険だと判断したとき、俺自身で止める。
・・・それくらいできなければ、お前達の主人として失格だ」
失笑するような言い方でクライヴは気楽に話した
その表情はかつて見たことのない、優しい表情であり
闇の騎士達お心を安心させるものだった
アークが再び鬼達をクライヴの前に差し出そうと準備している中
クライヴは左手首に張り付いていた赤い蝶を見ようと視線を下ろした
だが、そこにはもう赤い蝶はおらず、痛みも消えていた
(さっきのは一体・・?)
クライヴは少し考えこもうとするが
すぐにアークが声をかけ、儀式の準備が行われていく
闇の魔力を右手に手中させ、クライヴは鬼の心臓を取り出すため
抵抗できないが、必死に声を上げながら助けを求める鬼の胸部に爪を立てながらめり込ませ
心臓を取り出していった
その光景を、サルナス、アーク、ラルザは静かに見守っていた
かつてのクライヴの過去をの光景と重ね合わせながら
儀式が終わったのち、クライヴが暴走する可能性も踏まえながら
それでも止めることができない
それが闇の騎士として作り出された者の定めだった――。
「サルナス、もしクライヴ様が話されていた友というのが、光側の人間であった場合、あの蝶が黙ってはいないでしょう」
儀式の範囲から少し離れて見守っているアークは
サルナスに小声で話しかけた
「あの呪われた蝶はクライヴ様に執着しています
おそらく、その友を狙ってまた闇へ堕とそうと目論むでしょう」
「あの蝶はかつて、クライヴ様が守ろうとした存在だぞ」
「それは過去の話でしょう
今は鬼神側の存在。
おそらく導入の儀式を終えられると、クライヴ様は記憶を取り戻され、蝶の元へ向かおうとするはずです」
「・・その時は、我々も付き従うまでだ」
「!」
「クライヴ様がどう判断されようと、我々はその思いを尊重する必要がある
それも闇の騎士としての役目だ」
サルナスの諭しに、アークは黙り、答えようとしなかった
その表情は悔しさで満ちてはいたが
サルナスはそれ以上何も言おうとはしなかった