第8章 監獄と闇の騎士
監獄―――――
それは闇族が作り出した異空間の世界
全てが闇で作り出されたその世界は
闇族の掟を破った者や、生前に呪い殺された者、生者の世界に未練がある者の魂が集う場所だった
監獄にたどり着いた者の魂は、次の生を受けるまで千年かかり、たやすく抜け出せることはできなかった
人間はこの世界を地獄とよんでいるが
人が語る内容より、更に深刻で残酷だった
監獄には鬼神と呼ばれる管理者が存在し
それは闇の眷属神として、シャルゼと契約を結んだ異形の者である
鬼神は主に監獄を外部の者から崩されないよう、管理しており
呼ばれざる者がたどり着いたとき、その者の魂と記憶を辿り、生者の世界で生きている親族や友人などを呪い殺すこともしていた
そんな凶悪な力を持つ鬼神と異世界が存在していることを
天族は知っていても手が出せなかった
異空間や空間を瞬時に移動できるゲートと呼ばれる術を使用すれば、監獄に侵入することは可能ではあるが
侵入後、悲惨な結果につながるが故、手をこまねいていた
監獄に落とされる者の中で、生きた者もいた
暗黒戦争時、闇の神の命令に背き、ある少年は一人の女性を守ろうとした
そして、闇の神の怒りに触れ、女性は呪われ
少年に付き従っていた騎士三名は監獄に生きたまま落とされたのだ
女性は憎しみを食らい続ける赤い蝶という化け物へ変わり
騎士たちは覚めない悪夢のように、鬼神から送られてくる刺客と戦い続ける日々を送っていた
そんな中、鬼神からの刺客を倒した騎士の一人で同時に魔術師である男は、黒く染まる闇の森の中、血を大量に流し、意識を失って倒れている闇堕ちを見つけた
その闇堕ちを見つけた時、男はアメジスト色の目を見開き、己の目に映っている少年を疑った
髪色や瞳の色は変わっているが、その姿は遥か昔、自分たちが使えていた主人だったのだ
暗黒戦争以来、行方不明になっていたが
その主人は今、何らかの重傷を負い、瀕死の状態である
男は迷わず少年を担ぎ、自らの仲間が隠れているアジトへ連れていくことにした――――――