第7章 闇の神
己の非力さに対しての怒りを、ヒルトへ八つ当たりし
闇堕ちでインドリームではないことを理由に
クライヴを救おうとする必要性を疑ったこと
そして、自然に己の夢を否定し、選ばれたものだけを救おうとしようとし、矛盾の闇から抜け出せずにいたこと
そのすべてが、ヒルトの言葉で解消した
仲間を失いたくない
始めはそんな純粋な気持ちからうまれた全て
いつしか強敵を目の前にすることで
紐が絡まるように複雑な感情が芽生えていた
ライセイが最後まで話をさせようとせず、イラついていたのは
冷静に考えればアランが悩んでいたことは小さな問題であり
答えはすぐに見つかるにも関わらず
前に進もうともせず、立ち止まっていたからだ
心の靄がとれ、すがすがしい笑顔でアランは笑い
ヒルトの手を握り返した
「ごめん、ヒルト
あたし馬鹿な事ばっかり考えてた」
「大丈夫だ、アラン」
「あたし、あんた達が帰ってくるまでライセイやジェイク、イリヤ、天族を守って見せるわ
だから、クライヴの事はよろしく」
「ああ、ありがとう」
「アランさん
行ってきます」
ヒルトの隣で優しく声をかけるユリエフ
その表情はすでにアランに教え諭すことはない
そんな空気をかんじた
見守っていたキャリーはヒルトとユリエフを呼び、巨大な魔法陣を描き、そこから監獄へつながるゲートを出現させた
雷と莫大な魔力が異空間からあふれ出し、暴風のような風圧で全員の髪は荒れた
目をあけることも難しい嵐の中にいるような感覚
異界へ渡ることが、どれほど危険か物語る勢いだった
それでもヒルトとユリエフはクライヴを救うため
ゲートの中へ足を進めていく
その様子を黙って見守るアランとライセイ
そしてゲートは閉じられ、遺跡の中は静まり返る
吹っ切れた表情でアランは天族に声をかけ、治療を手伝おうと申し出たのだ
アランの申し出に、天族は困惑するが
キャリーが承認し、アランは水族特有の治療術を天族に伝え
人の細胞に悪影響がでにくい治療方法を伝授した
アランの助力により、ジェイクとイリヤの脈は正常に戻りつつあり
ライセイは満足そうにその様子を見守っていた――――――。