第2章 風を司る者
魔族は最後まで話す事なく
首をはねられ、黒く汚染された血が飛び散る
転がる魔族の首からは漏れ出す魔力
全ての魔力が放出された胴体は灰と化し、消えかけているが
頭部はまだ微かに残っていた
クライヴは頭部を掴み、闇の能力を使い、魔力を取り込んでいった
赤黒い魔力がクライヴの中に吸収され
抜け殻になった頭部は完全に灰になり、消えた
「ーーーー死体となってからの魔力吸収では
有力な情報は取り柄れないか・・。
やはり、生きながら取り出す必要があるな」
「残酷な事を考えられるのですね」
「?!」
クライヴが振り向くと、そこには見慣れない男が立っていた
金髪にウェーブがかかったショートヘア
右目には紫の龍の刺青、赤と黒のオッドアイ
どこか古風な騎士の格好をした若い男
敬語を使うがどこか馬鹿にした口調
その男から感じる魔力は尋常ではなく、クライヴは一気に身構えた
「何者だ」
「赤き龍の化身、トレイタス・R・ラゾーラです。
以後、お見知りおきを。」
軽く微笑みながらトレイタスは名乗る
その名に、クライヴは何処か聞き覚えがある感覚だった
だが、まったく思い出せなかった
わかるのは、この男はかなり危険だ、ということだけだった
『洞窟に満ちていた禍々しい魔力はこいつのものか・・』
頭の中で考えていたクライヴに、トレイタスは少し小馬鹿にしたような口調で話しだした
「ところで、魔族の魔力を吸収したところで、貴方の知りたい事は知れませんよ?
彼等の記憶にまともな事はないのですから。」
「その口調からするに、お前は知っているようだな、俺が求めている答えを。」
「さぁ・・どうでしょうね。
私が言える事はただ一つ、貴方がその赤い蝶に干渉すれば
壊れる、ということです」