第7章 闇の神
「お前が選んだのだ、ヒルト・クローズ」
「え」
「お前はクライヴを闇の世界へ落とすことを選び
変りにインドリームの仲間を救うことを選んだ
・・所詮、人は闇を恐れ、常に優先となるのは光側の人間だ」
「ちがう・・おれは」
「何が違うのか?
現にお前はクライヴを見捨てたではないか
仲間だの友だの、ごっこ遊びはいい加減にしておけ。
私の前で、偽善は不要だ」
「っ・・!」
シャルゼに言い返そうと思えばいくらでも言い返せた
それはヒルトの本心からの気持ちであり、決してクライヴにむけていた気持ちは偽善ではない
だが、ここでこれ以上言えば言うほど
同時にヒルトはアラン達から疑われる方へ話が進む
クライヴを救いたかった、といえばアラン達を救ったのは本心ではないのか――――
インドリームの仲間を救うべきだと言えば、クライヴは捨て駒か―――――
どちらを答えても、ヒルトにとって苦痛の反応しかされない
すでに背中をむけていても感じる
アランの疑心に満ちた表情が、ヒルトにむけられているということが。
「では、我々は用があるのでな
これで失礼しよう」
シャルゼが闇のゲートを開き、姿を消そうとしたとき
ヒルトはどうしても確かめたかったことがあり、大声で呼び止めた
「闇の神、シャルゼ・ベネディクト!」
「・・・―――――」
「クライヴを落とした闇の世界とは、何なんだ」
「ふっ・・・
それはそこでコソコソと隠れて監視している天族へ聞け
奴らならすべて知っているだろう」
シャルゼは振り返ることなく、姿を消して監視していたキャリーの事を指して消えた
ゲートに続いて消えていくアルトリア、トレイタス、ヴァン、ルキュリア、アラモード
一言も話すことなく、最後は虫けらを見るような目でインドリーム達を見つめ
姿を完全に消した
その場に残ったインドリーム達
ヒルトは腰の力が抜け、膝をつきながらしゃがみこんだ
ユリエフはヒルトの方へ駆け寄ろうとするが、アランに呼び止められ、ジェイク、イリヤ、ライセイの治療を優先した
消えたクライヴの場所を黙って眺めるヒルトは
魂をぬかれた人形のようであり、息をする声以外、何も話さなかった