第7章 闇の神
暗い世界
それはクライヴの記憶の中だった
目の前に見えたのは、仮面をかぶった異様な魔術師たち
己の背中には魔術印がどこかへ伸びて繋がっており、チューブ官の代わりのような役割を果たし、魔力を供給していた
両手を前へのばすと、ガラスの結界にあたる
息はできるが、それは特殊な水の中にいるからだった
この記憶はクライヴが生まれた時のものであり
最初に目を覚ました時の光景
クライヴが手や足を動かすたび、あわただしく動きだす魔術師達
次第に魔術師の司令塔と思える男が部屋に入り
クライヴの結界を解き、あふれ出すはずの水を一か所に集め
綺麗な亜麻布をクライヴの背中から全身が包まれるようにおおわせ
その場で全員がひれ伏した
「我が神、シャルゼ・ベネディクト様の息子
クライヴ・ベェネディクト様に栄光あれ。
我々闇族の全てを捧げましょう
必ずや、貴方様に極上の供物をささげると、ここに誓います」
「―――誓います」
中核の男に復唱するように、他の魔術師たちも話した
その言葉の意味に、クライヴはまったく理解できず、なにも話すことができなかった
それから数百年―――――
己の父親にあたる男と対面した
その男はクライヴと同じ人の姿をしており
闇を溶かしたような紫紺色の長髪を一つで束ね
赤い瞳をし、黒い羽のマントを右肩からおおっている
シャルゼ・ベネディクトと呼ばれる父親は闇の神であり
その器は特殊な術で作られていると話していた
そして、クライヴを作った理由も語り
そのうちに秘めている力、全てを発揮させるために
多くの実験を行った
幾度となる返り血を浴び、多くの種族を闇で汚染し
何千となる魔獣や悪霊、神話の英霊達をクライヴの中に無理矢理ねじ込んだ
痛みに耐えかねず、その都度肉体は崩壊し、おびただしい血を吹き出しながらクライヴの命を削っていった
泣き、怒り、狂い、絶望し、苦悩し、もがき苦しむクライヴ
それでも一切助けることはなく、父親は実験を繰り返し
クライヴを着実に闇へ落としていく
蘇る記憶の中、時折、クライヴは父親にすがるように手を伸ばし、助けを求めていた
「父・・・上・・・」
蘇る記憶の中、かすれた声に応えのは
そこに聞こえるはずのない男の声だった