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IN DREAM2

第6章 天族


だがクライブはそういった感情だけで闇が疼いているようには
感じなかった
それどころか、危機感、防衛反応、恐怖、そういった感情と懐かしさ――――
そういった相反する感情が渦巻き、闇が反応している気がした

「なんなんだ・・これは」


ドクンっ

「う゛っ?!」

発作と言えるその痛みは心臓から発せられ
我慢できず声を上げてしまうほどのものだった

ドクン   ドクン

発作は更に強くなり、心臓がはちきれるような痛みが全身を襲う

「な・・にが・・」

心臓を抑え、その場でもがき苦しむ
それでも発作は止まらない

そんな中、遠くから数人の人間と馬車で荷物を引く商人達が街道を歩いてくるのが見えた
商人達は楽しく話ながら会話を楽しんでいる
まだクライヴとの距離があり、存在に気付かれてはいない
だが、見つかれば確実に逃げ出すだろう
いや、それならまだ良い
闇堕ちであるクライヴは今謎の発作で力が何出せない状況だ
弱っている闇堕ちだとわかれば、商人達は何かしら手を出してくるだろう
それだけは避けなければならない
今のクライヴに力はないが、同時に破裂寸前の風船のような状況でもある

発作が強くなればなるほど、闇が内側で暴れる感覚がした
それを抑え、痛みにも耐えなければいけない時に
外部から攻撃をされると、一気に理性がなくなる
そんな気がしたのだ

「人間を傷つけることに・・躊躇するとは・・な
ヒルトの・・影響を・・受けすぎたか・・・・」

クライヴは立ち上がり、ふらつく足で森の中へ走って身を隠した


「―――――」

商人達の話声が耳にはいってくる
金の話や、流通の情報、ある国で珍しい宝石が発見された情報など
人間であれば耳を大きくする情報ばかりだろう
だが、クライヴには雑音にしか聞き取れないほど、聞きたくない声だった

聞けば聞くほど闇が疼く

殺せ
血を浴びろ
楽しめ
従え

そうどこから囁かれるように、頭の中で声が聞こえた
それは殺戮衝動と呼ばれる幻聴

魔族や闇堕ち、半魔等、闇を持つ者であれば必ず持ち合わせている危険な本能である
人で言う病のようなものと比較できる
殺戮衝動が発生した際、己の力だけでは抑えることが難しい
だが、これに飲まれると魔族と化し、暴走する
それはクライヴにとって死よりも地獄といえる結果だった

だからこそ、商人達から更に離れるように歩き出した

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