• テキストサイズ

IN DREAM2

第6章 天族


アスタニア暦690年

天族では暗黒戦争終結の10周年記念として、祝杯が挙げられていた
天空に浮かぶ大陸の上に建築された豪華な教会や城、街
それは地上の人間が創る建造物とは格別に美味しく
建物一つ一つに施された造形に必ず天使が形作られ、指の爪には
宝石が埋め込まれていた
無論、実在する天族の爪に宝石が埋め込まれていることはない
だが、それほど輝かしい存在と表現したいのだろう
天族という種族がどれほど崇高で偉大な種族か見せつけたいーーーー
そんな思いが領域内の細かい所まで行き届いている

天から降り注がれる光の粉は
祝杯に参加し、天界全域を飛び回る下級天使達が作り上げた供物

この祝杯の時だけ、天族は階級制度を無視した同等の会話を
どの者とでもできる取り決めを設けた
普段、天族の階級天使と大天使が会話をすることはなく
武技を得意とする天軍と魔法術を得意とする士官も
肩を並べて話すことも食事をすることもないが
今日、この日だけは日頃のプライドを忘れたように
酒を飲み、食事をし、楽しんでいた

「讃えよ!
喜べ!
今日この日を!
世界を光に導き
闇が消え去った祝祭すべき瞬間!
我々こそが、人を導き、繁栄をもたらした崇高な種族!
天族であるーーーー!」


一体の大天使がラッパを吹きながら
天空を舞いながら讃えた
それに続き、宴をしていた者達も
その場で復唱し、天空全域に響き渡る
まさに天界は華やかな瞬間である

だが、そんな光景を数キロ離れた教会から見ていた一人の女性は
苦虫を噛んだような表情でその様子を見ていた
その瞳はワインレッドのように鮮やかな色で
黄金に輝く短い髪を特殊な亜麻で作られた髪留めで飾り
白い雪のような肌に、曲線を描いた魅力的なボディー
局部が見えそうになるほど露出した服に
下半身はタイト型のショートスカート
赤いヒールをはいたその女性の背中からは
白く巨大な翼が4本生えている

「はぁー・・退屈だわぁ」

その女性の足元には赤く飛び散った血と
肉塊が転がっている
それでも、彼女は目にも止めていない
見えていないわけではない
景色の一部のような扱いをしているのだ


そんな教会に一人の男が息を切らして走ってくるのが聞こえてくる


男は女性を見つけた瞬間、少し喜ぶが
足元の悲惨な光景に顔が歪む
ずっとそこにいた女性とは正反対な反応だ


/ 820ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp