第5章 水と火
それ故に、応募者が多数おり、すぐに終了する依頼内容であるため
解決するのに時間はかからない。
だがひとつデメリットがあった
それは、依頼人のアランが応募者に渡す報酬金だった
その額は多額であり、アランが一人で旅をしていた頃に積み立てていた貯金の大部分を失う額だった
それでも、アランはこれをすぐに実行した
こんなお金で救われる命があるなら、喜んで差し出すーーー
そう言ってリザードマンの力になることを厭わなかったのだ
そして依頼は達成され、応募した商人に多額の報酬金が支払われた
リザードマンは必要な物資と金銭を商人から引き取り
静かに集落から旅立って行った
その姿を最後まで見守ったアランとヒルト
「助かったわ、ヒルト
あんたが提案してくれた内容がこんなにも
うまくいくなんて、思ってなかったわ」
「ありがとう
俺もリザードマンが救われてよかったと思う。
けど、最後にこの町を出るまでにしておきたいことがあるんだ」
「しておきたいこと?」
ヒルトの話にまったく見当がつかないアラン
「あぁ、魔女の催眠術にかかっていた人間達。
彼等の問題には、ユリエフが協力してくれているところなんだ」
「ユリエフが⁈
どうやって・・」
「ホルメイン町の役人や領主宛に、直筆で手紙を書いてもらったんだ
内容は、催眠術をかけた犯人と、リザードマンは武装していたが人は襲っていなかったこと。
そして、ゼルペウスとう男が人間もリザードマンも助けようとしたこと、インドリーム含める天族のユリエフはこの件でこれ以上リザードマンを追求するとは許さない、とね」
「そ、そんな事を言って、人間の領主達が納得するの?」
「しますよ」
「ユリエフ!」
その場に当然現れたユリエフは、微笑みながら答えた
「私が言うのも恥ずかしいんですけど、天族の直筆の手紙は信用されるんです。
天族は光のエレメンツを持つ種族なだけに、真実しか語れないんですーーー
なので、嘘はどうやっても語れないので、古代から天族が書いた手紙や記録書は信頼に値し、信頼性の担保としても扱われてきました
彼等人間がこれを見れば、今後リザードマンに手出しはしないでしょうし、催眠術にかかった屈辱をリザードマンにぶつけることはありません」
「そうだったの
ごめんなさい、知識不足だったわ」
「大丈夫ですよ
アランさんを見て、私でも力になれたらと思いました」