第2章 風を司る者
「ヒルト、ここから東へ向かい、街を超えた先に森がある。
そこの中心地へ行け
洞窟が見えたら合図する」
「了解、ユリエフ、捕まっててくれよ」
「は、はい!」
ヒルトの肩に手を置き、ユリエフがしっかりと立った瞬間
風は吹き荒れ、宿屋の窓から飛び出す
「!」
ヒルトがインドリームの力で創り出した風の球体がヒルト、クライヴ、ユリエフを包み
空中に浮かせると、森の方角へ勢いよく飛んでいった
町外れになり、森に近づいていくと、街道は荒れだし
岸の下には壊れた馬車や動物の骨が捨てられている
数多の旅人や商人がこの街道で魔族に襲われた事がすぐにわかる光景
森に入っていくと、風の勢いは静まり
緩やかなスピードで進んでいく
「魔族の魔力が強く感じてきている・・近くにいるな」
「!
ヒルト君、あれを!」
ユリエフが指を指した方角には、下級魔族に襲われかけている
一人の子供がいた
「た、たすけて!」
子供は叫びながら顔を両手で隠し、震える足を必死に動かしながらヒルトの方へ走ってきた
「こっちへ来い!
ユリエフ、この子を頼む」
走り寄る子供をユリエフは抱きしめ、ヒルトは魔力で体内に収めていた大剣をすぐに取り出し、下級魔族を一掃する
叫けぶ間もなく、魔族は浄化され、その場には魔力を失った灰の抜け殻しかのこらず、その灰も風に吹かれ、消えてしまった
大剣をすぐに戻し、泣く子どもにヒルトは優しく肩をたたき話しかける
「大丈夫だ、魔族はもういないよ。」
「うっ、うっ、うっ、
あ、ありがとう」
「君、名前は?」
「エア」
「よし、エア君は1人でこの森にいたのかな?」
「お父さんと旅商人の皆んなで旅をしていて、次の街まで行くのにこの森が近道だときいて、ここを通った瞬間、魔族が襲ってきたんだ。
皆んな、連れて行かれて僕だけが逃げたんだ・・けど、追いつかれてしまって・・・。」
泣きじゃくった目から溢れる涙を拭きながら
静かに話すエア
そんな姿にヒルトは助ける以外何も考えがうかばなかった
「きっと、お父さん達が連れて行かれたのは魔族の大元がいる洞窟の中だな。
エア、俺たちは今から魔族の大元を倒しにいく。
そして必ず、お父さんや旅商人を助けてるよ」
「お父さん達、生きてるの・・?」
「断言はできないけど、可能性としては考えられる」