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IN DREAM2

第5章 水と火


だが、ルキュリアはジェイクに向かって歩くのではなく、
切られた尻尾を抱きしめて黙っているゼルペウスへ近づいた

「あなたなら、あたしを殺せるかもね」
ゼルペウスの体はピクッと反応する

「あたしがあげた薬、あれを飲めばあなたはとっても強くなれる
リザードマンは水族の眷属だけど、性質は竜・・・
その体の中には竜の力が眠っているんだよ」
「りゅ・・う・・」
空回りな声だが、確かにルキュリアの話に応えていた

「そうだよ
今回、どうしてあなたはこんなひどい目にあったと思う?」
「――――・・。」
「それは、あなたが無力だから。」
「!」
「魔女と出会っていようが、貴方に力さえあれば最初から一族から追放されずに済んだのよ
家族は守れ、こーんなわかりやすい罠にもひっかからずに済んだんだから」
「力・・・・」
「そう、まだ集落に生き残っているリザードマンがいるわよね
彼等を守らないと。
これから本気で人間が攻めてくるし、それに対抗できるのは
ゼルペウス、貴方だけだよ。」

ルキュリアの甘い誘惑に、ゆっくり薬瓶に手を進めるゼルペウス
だが、インドリームなら助けてくれるかもしれない
そんな淡い希望を胸に秘め、ユリエフやジェイクを見る
「彼らは助けてくれないよ
だって助ける相手は人間じゃないし。
彼らが救うべきなのは劣等種族、人間―――ー
その人間が攻めてきたら・・・
インドリームが起こす行動は容易にわかるよねー?」

もやは選択の余地はない
今以上の力を手にすることが出来た瞬間
もう今までのゼルペウスとして存在できないことは
予測できた

目をつむると、愛する家族の顔が浮かんだ
だが、目をあけるとそこには尻尾だけ残された妻と
串焼きにされた子供
それをおいしそうに食べ続ける魔女
集落には残され、傷だらけの同族たち

決心がついたように、躊躇なく薬瓶に手を伸ばすゼルペウス

「まって・・・」

かすれた声で、なんとか止めようとするアラン
ルキュリアはアランを睨むが
それでも話し続けようとする

「それは・・危険すぎる・・
あたしが・・守ってみせ」
「守れてない」
「!」

切り捨てるように話をかぶせるゼルペウス

「何も守れてないじゃないか
集落も、仲間も、君自身も・・。」

「ゼルペウス―――」

「俺はもう、十分だ
こんな世界でこれ以上非力な己のせいで仲間が傷つくのはごめんだ」
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