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IN DREAM2

第5章 水と火


「ハァ・・ハァ・・」

泥道を走り、必死に一本道を走っていくゼルペウス

例え泥道であろうと、リザードマンである彼にとってみれば
普通の道同様だった

そしてかすかに香る錆びた鉄の匂い
それはかつて戦場で戦っていたことのあるゼルペウスだからこそ、よく知っているものだった

血の匂いだ

「くそっ・・なんでこうなるんだ・・!」

嗅覚に優れているリザードマンは血の匂いも
どの種族のものか、すぐに判断ができる

そして鼻の奥にまで届くこの血の香り

同族の血

「!」
隠れ道の途中は森へつながっていた
そしてそこには串刺しや首をはねられ、無残に殺されたリザードマンの死体が何十体と転がっている

「あ・・あああぁ・・!」

絶望に染まっておくゼルペウス

全て遅かった

人間にはリザードマンの動きが全て伝わっていた
それは冒険者組合に依頼をかけられていたのがその証拠

そこに魔女がつけこんだのだ

人間側には確実にリザードマンが動き始めたと嘘の情報を流し
リザードマン側には、人間が奇襲をしかけるから隠れ道を作り、未然に防ぐよう提案した

だが目的はリザードマンの全滅
それも欺きながら一方的に虐殺していく戦法

まさしく魔女だからころの発想だろう
腰にぶら下げていた薬瓶を取り、投げ捨てようとした
だが、その手は止まる
薬瓶を渡された時、魔女がいった言葉を思い出す

『それは君の力になる薬だよ
もし、巨大な敵が現れたり、倒すべき存在に己の力が及ばなかった場合に飲めばいいからね―――ー』
「この薬は・・この瞬間のためじゃない
目の前に俺が倒すべき敵がいないから・・で、あれば・・
ま・・さか・・!」
『ゼルペウス君、あなたには家族がいるよね』
「っ!」
ルキュリアの薬とあの夜の話に、最悪の事態が伏せられていた
まだリザードマンは全滅していない
人間側がここにいないのは、生き残りを殺すため
それは逃げたリザードマンの戦士がいたとして、それを追っているのが理由で
この場にいないということなら、どれほど救われただろうか
もはや心に余裕はない
生き残っている同族はたった数匹
そして、その場所もあの魔女なら知っていた
なら、人間も知っていてもおかしくはない
「ミーナッ!」

家族を想い、愛しい存在の名を口にしながら走り続ける
向かう先は、数時間前に再開した家族が隠れている
あの洞窟だった
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