第1章 王馬くんがクッキーを作ってくれたそうです
勝ち確定だ。
現れて早々、友達から八つ当たりを受け続けている狛枝先輩の強運にいささか不安はあるが、それでも超高校級の幸運。
確か、全国の高校生の中から一人だけ抽選で選ばれた強運の持ち主に与えられる称号だったはず。
『狛枝先輩、力を貸してください。左右田先輩も、少し落ち着いてください』
「え…力を貸すって何するの?」
『あのクッキーでロシアンルーレットやります。私が勝ったら、王馬くんに謝らせるんで』
そんな条件聞いてないよ!と王馬くんが反論してくるのを無視して、もしもの時のために牛乳をグラスに注いだ。
その牛乳は自分の為に注がれたものだと思ったらしい左右田先輩が、私の手からグラスを抜き取った。
『いやそれ私のです』と伝えるが、もう遅く、仕方なくもう一つグラスを持ってきて牛乳を入れた。
四人でローテーブルを囲み、皿に王馬くんがクッキーを並べる。
ぱっと見では、どのクッキーも同じものにしか見えない。
「あー辛ェ……っ逢坂、お前本気でやんのか?」
『はい。でも選んでもらうのは狛枝先輩にお願いして、私は食べるの専門です』
「え、ボクに一任しちゃっていいの?責任重大だね」
「ッしゃあ!やってやれお前ら!!この壮絶な辛さをもって、己の罪を知れ王馬!!」
「どうなるのかな?身の危険が迫ってるスリルってやっぱり、すごく興奮するよね!じゃ、まずはオレから食べるねー!」
王馬くんは1枚クッキーを手にとって、サクサクとあっという間に平らげてしまった。
トマト!と笑って彼が言うと、心から悔しそうに左右田先輩がクソォ!とテーブルを叩く。