第3章 王馬くんに風邪をうつされたみたいです
「オレが一緒なんだからいいじゃん」
王馬は、はっきりとした声でそう言った。
「別に家族同伴じゃなくたって良くない?オレなんて本当に病院行けないから、ただの風邪こじらせただけで闇医者にぼったくられルートだよ」
『……なんで病院行けないの?』
「闇社会の総統が病院のカルテに個人情報なんて残させるわけないじゃん!」
そんな理由か、と言ってやりたいけど、自分は「待合室で甲斐甲斐しく介護されている親子を見たくない」という理由で病院を拒んでいる身だ。
似たようなもの、と言って差し支えない気がする。
「逢坂ちゃんの理由なんてオレの理由に比べたら大したことないよ!」
『……』
大した差異も無い、と結論づけた矢先、王馬が喧嘩をふっかけてくるかの如く私の拒否理由をぞんざいに扱った。
『……大したことあるよ』
「だからさ、周りから家族に見られればいいんでしょ?遂にオレの変装スキルを、逢坂ちゃんにアピールする日が来たみたいだね!」
『……。』
(……完全に、楽しんでるな)
家族に変装するだけだというのに、王馬は紙を広げ、「愛人」「ペット」「資産」「職業」「年齢」「見た目」という順番で設定を書き加えていく。
いや、確実に設定の優先順位おかしいよね。
と頭の中で突っ込んだが、彼はふざけ半分ゆえに、自分がおかしな優先順位をつけていることにも気づいていないようだ。