• テキストサイズ

出演者達に休息を「番外編」

第3章 王馬くんに風邪をうつされたみたいです




「ーーと、キー坊は……だなぁ。腕の…」
「……せん!ーーー差別ですよ!」


近くで、聞きなれた声がした。
目が覚めて、口論になっている2人を眺める。


「あ、逢坂ちゃん!アイス買ってきたからオレと食べようよ!」


買い出しに出かけてくれていた王馬が帰ってきたらしい。
彼は大きなビニール袋にお菓子やフルーツ、アイスや夜食をたんまりと買い込んできたらしく、片手だけを使って、私の枕元に一通りのアイスを並べた。
その動作に違和感を感じ、視線をやると、キーボとつないでいたはずの私の手は、なぜか今は王馬の片手と繋がれていた。


「…っはい!どの味がいい?オレはね、コーヒー味以外ならなんでもいいよ」
「ちょっと、博士は今悪寒が止まらないんです!アイスなんて死に直結しそうなものはよしてください!」
「アイスが死因って笑っちゃうよね!葬儀屋は参列者になんてアナウンスすればいいのかな?」


重症患者の前で葬儀屋のアナウンスのモノマネを始める王馬。
いつもだったら即座に頭を小突いてやっているところだが、今日はそんな元気も残されていない。


『……は……っ………』
「……逢坂ちゃん、病院行かなくていいの?」
『……行かない……』


病院なんて行きたくない。
あんな待合室で時間を過ごすくらいなら、ここでうなされていた方が何倍もマシだ。


「ね、なんで病院行きたくないの?」
『……ザ・家族展覧会みたいじゃん…』
「展覧会?」


ごほ、ごほと咳き込んで、王馬に背を向けた。
私の言葉の意味をしばらく考えていたらしい王馬だったが、ふーん、とどっちとも取れない返事をして、外の外気とアイスの温度で冷えた片手を、私の額に置いた。


「………でもさぁ、オレの時より熱高くない?」
『……大丈夫』
「大丈夫じゃないって。病院行くよ」
『………行きたくない』


/ 39ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp