第3章 王馬くんに風邪をうつされたみたいです
時刻は、深夜0時。
熱でうかされて眠れず、クリスマスを呪って過ごしていたが、残念ながら26日になってしまった。
もう暦を呪って気を紛らわすことすらできない。
「博士!取り替えてきました!」
バァン!と荒々しく扉をあけ放ち、キーボが私の元へと駆け寄ってきた。
『…キーボ、落ち着いて』
「落ち着いてます!博士、早くこれを頭に」
『…待って、びしょびしょだから手ぬぐいみたいなものを巻いてくれないかな』
「あっ、すいません!持ってきます!」
『キーボ、走らなくていいから』
まさか、彼がここまでパニックになってしまうとは予想していなかった。
熱の高さ的には私も王馬も似たり寄ったりだったはずなのに、昨日冷静でいられたものがなぜ今日冷静でいられないのか。
急いで手ぬぐいを持ってきた彼は、ガチャガチャと音を立てて、氷枕にそれを巻いた。
頭を片手で持ち上げられながら、彼の淡く光る瞳を見つめた。
『………………キーボ』
「はいっ!」
至近距離で見つめ合っていると、彼の瞳の奥に、存在しないはずの感情が透けて見える気がした。
まるで、ロボットとは思えないその視線に、我ながら息を飲んだ。
『……。』
「……博士?」
逢坂博士、大丈夫ですか?
辛くはないですか?
何か欲しいものはありますか?
(………)
矢継ぎ早に問いかけてくる彼の口に人差し指を置いて、息を切らしながら、出来る限り柔らかく微笑んだ。
『……大丈夫』
「……っなにか、できることはありますか?」
私は彼の優しい視線を一身に受けながら
ただ、一言
彼にしか聞こえない声で、囁いた
『…………そばに居て』
キーボは
ずっと側にいます、と言って
私の手を握った