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出演者達に休息を「番外編」

第3章 王馬くんに風邪をうつされたみたいです




12月25日。
世間は未だ、クリスマスの装いに浮かれている。
今年最後の大イベントを謳歌する時間を見つけた男女カップルや家族が、街へデートだ買い出しだと繰り出しては、きっと楽しいひと時を過ごしたことだろう。
カップルの間では会計が終わる十分ほど前にどちらかから「今日は帰りたくない」なんて衝撃の口説き文句が飛び出し、その意志がテレパシーで伝わっていたかのように相手は「ホテル、取ってあるよ」と返事を返す。
家族の食卓には狩りではなくその辺のスーパーで手に入れてきたお手軽な七面鳥がこんがりと美味しくなった状態で並び、子どもたちは一番美味しい部分の鳥の足を誰が食べるのかで喧嘩しそうになり、それを笑って両親がたしなめる。


きっと、そうに違いない。
なんやかんや、うまくいっているに違いない。
なんて、なんて。
あぁなんて恨めしいことだろう。


『……ごめん、キーボ……体温計とって…』
「あっ、はい!どうぞ!」


私はそんな世間を呪いながら、自分の片手に握られている体温計に表示された数値を眺めた。
視界が霞んでよく見えず、顔を近づけて見ようとした時、心配そうなキーボがその体温計を取って、数値を代わりに読み上げてくれた。


「…39.2度⁉︎は、博士…救急病院に行きましょう、死んでしまいますよ!」
『……死なないよ……大丈夫』
「で、でも…あっ、ボク氷枕変えてきます!」


キーボは病人の頭が乗っている氷枕を瞬時に引き抜き、駆け足で部屋から出ていった。
テーブルクロス引きのグラスのようにうまくいけばよかったのだが、私の頭はキーボがいた方と反対側にぐるんと周り、あまりの速度にただでさえ頭痛がひどい頭を軽くベッドに叩きつけてしまった。


(普通に痛い………キーボに看病の仕方、昨日教えたはずなんだけどな……)


ガンガンと鳴り響く頭を押さえ、げほげほと咳き込む。
携帯を時計がわりに見て、軽くため息をついた。

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