第2章 1-aでは愛してるよゲームが流行ってるみたいです
彼は癖っ毛の後ろ髪を両腕で掴んで、自分の顔の前でクロスさせた。
口元を隠した彼はなんだか、いつもより血色が良くなった気がする。
逢坂さんが顔を覗き込むと、ふいっと顔をそらしてしまった。
もう一回、ともゲームなんてしないよ、とも言わない、言えない、彼の行動の理由はまるで。
(……え、照れてる?)
それ以外に、考えられない。
『…これ、私の勝ちなの?』
「……………………………………………バカ……」
『ん?』
「勝ってないよ、照れてないし!」
王馬くんがパッと髪から手を離すと、くるんとしたくせっ毛がまた元の位置に戻っていく。
逢坂さんに指を指して、強がってみせる彼に、逢坂さんはもう一度攻撃をした。
『愛してる』
「………っ……逢坂ちゃんのバカ、そんなゲームつまんないよ!」
『そうかな。王馬とやってみたかったんだけど』
「もう流行ってないんだから!バーカっ!バカバカバーカ!」
『ちょっと、照れ隠しはもっとうまくやりなよ』
「バカじゃないの!?照れてないよ!今日はもう逢坂ちゃんと帰ってあげないから!」
顔を真っ赤にして、ばか、ばかぁっと繰り返す王馬くん。
やっぱり、僕の推理は当たっていた。
ひどくかき乱されている彼をa組の他の生徒が見てしまったら、しばらくからかってくることは間違いなしだ。
『ごめん、ごめんって落ち着いて』
「王馬君、少し静かに」
(………。)