第2章 1-aでは愛してるよゲームが流行ってるみたいです
「終一、愛してるぜ♡」
「…百田くん、僕そのゲーム好きじゃないんだ」
「なんだよー乗ってこいよ!おっ、ハルマキともやったことなかったな。愛してるぜ!」
「は?殺されたいの?」
それから数日経って、愛してるよゲームのブームが去った頃。
百田くんは遅れて、ようやく愛してるよゲームにハマってきたらしい。
「終一もハルマキもノリ悪いな」
「百田ちゃん」
「ん?…っげ」
「愛してるよ♡」
振り返った百田くんに、背後にいた王馬くんが言葉をかけた。
も、もう一回…と答えた百田くんに、躊躇いなく王馬くんが愛してる!と繰り返す。
「もう一回!」
「その貧乏丸出しのちょび髭に誓って愛してるよ!」
「あぁん!?誰が貧乏丸出しだ!」
「意味不明なダッサイ着こなしのその制服すら愛してるよ!」
「褒められてる気がしねーよ!」
(…王馬くん、意外と付き合い良いんだよな)
ヘドが出る、と言っていたわりに、百田くんと王馬くんは飽きることなく数日にわたって、お互いが度々奇襲を仕掛ける形で勝負を申し込んでいる。
「やぁ、最原君。遊びのお誘いに来たっす」
「…天海くん、こんにちは。遊びのお誘い?」
呆れ顔で二人を眺めていた僕に声をかけて来たのは、天海くんだ。
彼は愛してると繰り返す王馬くんと百田くんを眺め、まだやってるんすね、と少し呆れ顔をした。
「最原君もやったりするんすか?ああいうゲーム」
「…何回かやったけど、恥ずかしくて苦手だよ」
「逢坂さんとはもうやりました?」
「やったけど、一撃だった」
そういえば、早くハンカチを返しに行かないと。
「天海くん、いま教室に逢坂さんはいる?」
「いるっすよ。何か用っすか?」
「ハンカチ借りてたんだ。遊びのお誘いって、歩きながらでも良い?」
「じゃあ、一緒にb組まで来てください」