第2章 1-aでは愛してるよゲームが流行ってるみたいです
「えっ、逢坂さんこれハンカチだよ」
『うん、ティッシュすぐ見つからなくて。制服汚すよりいいよ』
「でも…」
洗って返してくれればいいから、と逢坂さんは微笑んだ。
自分のダサさに呆れる。
ダサい原って改名した方が、案外しっくりくるんじゃないだろうか。
「あ、亜美!良いところに!王馬くんと愛してるよゲームしてみてよ!」
『…王馬と?』
「王馬くん強くて誰も勝てなくてさー、…あれ?最原くん大丈夫?」
「…大丈夫、ただのぼせただけだから…」
自分が好きな人とやる分には良いこと尽くしなのかもしれないけど、他人と好きな人が「愛してるよ」と言い合っている姿を見るのはなかなかに辛い。
『王馬強いんだ。たしかにそんな感じするよね』
「王馬くーん!こっちきてー」
「あっ、逢坂ちゃんだ!オレがそっちに行く前に来るなんて珍しいね?ようやくオレと下校する習慣が身についてきたってことかー、嬉しいよ!」
「王馬くん、亜美と愛してるよゲームしてみてくれない?」
「……逢坂ちゃんと?」
「うん、王馬くんに勝てるのって亜美しかいないんじゃないかと思って」
「やだ」
意外な返事が返ってきた。
王馬くんなら、逢坂さんと遊べると分かれば、何でも乗ってくるような気がしていたのに。
「えーなんで?亜美もきっと強いよ?いつも冷静だし」
「やだよ。逢坂ちゃん帰ろ!」
『なんでやりたくないの?』
「いや、やりたくないでしょ。それに、疲れちゃったんだよね。百田ちゃんの愛してるよって言葉は、反吐がでるレベルで気色悪かったしさ」
「んだと王馬!オレだって気色悪いわ!!」
軽くて薄い鞄を背負って、王馬くんが扉の近くに戻ってきた。
「帰ろ、逢坂ちゃん!」
(………。)
素直に、彼女にそんな言葉をかけられる王馬くんが羨ましい。
好きな相手に、好きだと言えるキミが羨ましい。
「逢坂さん」
『ん?なに、最原』
「……ううん、なんでもないよ」
また、明日ね。と笑いかけると
彼女は僕に笑いかけて
また、明日。と答えた