第2章 1-aでは愛してるよゲームが流行ってるみたいです
「最原ちゃん、愛してるよ!」
いつからそこにいたんだろう。
王馬くんと目が合って、数秒も経たないうちに僕は彼からの愛の告白を受けた。
……じゃなくて、愛してるよゲームの開始を告げられた。
たしか、「もう一回」って聞けばいいんだっけ。
「…えっと、もう一回」
「愛してる♡」
「………………………………」
「はい、視線が逸れたから最原ちゃんの負け!」
「えっ、目もそらしちゃダメなの?」
賞品として、そのお菓子ちょうだい!と王馬くんはにこやかに横暴なことを言ってくる。
彼の指差す方向には、僕が食べようとしていたビスケットの包みがあった。
それは、さっき逢坂さんと購買ですれ違った時、最原にもおすそ分けね、と貰ったお菓子だった。
「………嫌だよ」
「負けは負けでしょ。なんなら、もう一回勝負してみよっか?」
「最原くんはこういうゲーム、あまり好きじゃないみたいだよ?あはは、それに王馬くん、盗賊っぽい」
「盗賊?でも最原ちゃんはオレの勝負受けるって自分で決めたもんね?だからオレが一方的に言ってるわけじゃないはずだよ。もう一回やりたくないなら、そのお菓子ちょうだい!それで引き下がってあげるからさ!」
赤松さんの言う通り、本当に彼は盗賊のようだ。
王馬くんにとってはただのゲームに勝った証としての価値しかないのかもしれないけど、僕にとっては違う。
だってこれは、逢坂さんが僕にくれたものなんだから。
「……やるよ」
「えっ、やるの?」
「さっすが最原ちゃん!じゃあ今度は、最原ちゃんが愛してるって言う番ね!」